06
松野ファミリー。
口を閉じたまま、声に出さず反芻する。
極々平和に暮らしている一般市民でも、一度は耳にしたことのある単語。
キーとなる構成員は身内のみ、たった8名。
そのうち6人が六つ子だということなんて知らなかったけれど。
血を重視する、一風変わったこのマフィアの名が、一体なぜこんなにも知れ渡っているのか。
答えはひどく単純だ。
彼らは、敵対するマフィアをしっかりあっさり潰していく。
迅速に、確実に、もう二度と立ち直れないように。
たった二、三年で、松野ファミリーはこの地域に確固たる地位を築き上げた。
「俺らはサァ、血の繋がりがあるの」
「これはオレの持論だけど、この世で一番強い絆は血だと思うんだよね」
おそ松さんが、長いまつげを伏せて、ククク、と喉を鳴らす。
「なまえちゃんね、俺らの中で頑張れるかなぁ」
連れてきたのはあなたたちのくせに。
そんなこと、言えるはずもなくて、小さく唇をかんでうつむく。
ねっとりと、品定めするような視線がまとわりつく。
「戦えってんじゃあないよ」
「可憐なガールを戦いの場には出さないさ」
「でもま、女だからできることとかあるよね」
六つの瞳が、私を射抜く。
「ヒヒ、ご愁傷さま。俺達に捕まらなけりゃ、こんなことにもならなかったのにサァ」
「でも俺、なまえちゃんに会えて嬉しいよ!!」
「ふふ、怯えちゃって、ほんとカワイイね」
六つの瞳が、にんまりと三日月を描く。
「なまえちゃんって処女でしょ?」
おそ松さんの、あまりにあけすけな質問に、思わず俯く。
顔が熱い。
なんてこと聞いてくるんだろう。
周りの5人が、クスクスと笑う。
「あっはは、いいね、その反応。カワイイ」
おそ松さんは楽しげにカラカラ笑った後、黒いネクタイを緩めて赤いシャツのボタンを外す。
「いやいや、なにも娼婦の真似させようってんじゃないんだからさぁ、そんなに怯えないでよ」
無言のまま俯くわたしに、おそ松さんがやれやれというふうに笑う。
口の端からちらりと見えた鋭利な八重歯に、私は食われてしまうのだろうか、と無性に泣きたくなった。
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