07
好きに使っていいと与えられたのは、6畳の小さな部屋だった。
日当たりの悪いそこは、しばらく使われていなかったらしく、少しだけホコリっぽくて眉を寄せてしまう。
「とりあえず、服置いといたから着替えて。部屋は今日中に掃除させとくよ」
忙しいおそ松さんの代わりに、わたしの面倒見役を引き受けたのはトド松さんだった。
この人、人当たりは良さそうなのに、なんか怖いから、少し苦手だ。
「ん?どうしたの?着替えないの?」
こてん、と小首を傾げられて、慌ててぶんぶんと首を振る。
トド松さんはそんなわたしを見て、楽しそうに笑った。
部屋の箪笥に用意されていたのは黒いドレスで、取り出して広げてみればひらひらとスカートが揺れる。
「……あ、あの」
着替えをしようと服に手をかけても、トド松さんが部屋から出ていく気配はない。
躊躇いがちに彼の表情をちらりと盗み見ると、ひどく楽しそうに口元を歪めていた。
わざとだ。
「着替えするので、あの」
「ん?いいよ、しなよ」
にこにこにこ。
出ていくどころか、机から椅子を引っ張り出して、腰掛けてしまったトド松さんに、わたしは何も言えなくなってしまった。
できるだけ彼から見えないように、服の裾からドレスを引っ張り込んで着替えをする。
視界の隅っこのトド松さんが面白くなさそうに頬杖をついていたけれど。
「あ」
頭を通して着るところまでは良かったものの、ひとりでは背中のチャックをうまくあげられない。
つりそうになる片手で奮戦してみるものの、金属のチャックはうんともすんともいわない。
(頼めるはずない)
それに気づいたトド松さんは、それはいい笑顔でニコニコ笑っている。
目をそらしたわたしに、彼はゆったりと近づいて、それから目線を合わせてにぃ、と笑う。
「ねえそれ、僕やってあげる。お願いって、言って?」
疑問系なのに、命令されたような。
せめてもの抵抗の、小さな声のお願いしますは、彼にしっかり届いていたらしい。
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