風と心の鍵−7


1週間後、希糸はいつも通り屋上の日陰で煙草を吹かしてのだが、突然やってきたイナサに放課後に時間をくれ、と頼まれた。
あの日からも毎日イナサは来ていたが少し気がそぞろで、ヒーロー科の方が忙しいのかと特に希糸も気にしていなかったのだが、そういえば待っていて欲しいと言われた。
改めて告白でもする気か、なんてしょうもないことを思いつつ、前ならすげなく断っていたものを、今こうして放課後にイナサを待っている。

場所はなぜか事務員室前で、そこで待つよう指示された。
そこで待っていると、すぐにイナサと、もう一人、見た目が特徴的なので希糸も見覚えはった生徒がいた。毛むくじゃらの生徒はイナサと一緒にこちらへ来る。


「はじめまして、ヒーロー科2年の毛原という」

「…、普通科2年、開条」


ぶっきらぼうながら、自己紹介されたので自分も返すと、イナサが希糸の背後を見て「あ、」と声を漏らす。
つられて振り返ると、そこには、あの数学教師と校長がいた。教師はまだしも校長までいるため、何事かと希糸は驚いた。教師側も驚いている。
集まった教師と校長に、毛原が一歩前に進み出る。


「お呼びたてして申し訳ありません。ヒーロー科2年1組委員長をしております、毛原といいます。本日は、普通科2年開条君の先の期末試験における問題用紙盗難疑惑について、お伝えしたいことがあります」

「なっ、あれは開条が犯人だと結論が出ただろう!」


数学の男の教師はむっとして言うが、校長がそれを諫める。


「まぁまぁ…わざわざヒーロー科の生徒がこうして集めたんだ。何か重大なことに違いない」


希糸の主張はまったく聞かず適当に裁量を下したくせに、校長はヒーロー科の2人がいるというだけでこの態度だった。数学教師もそれ以上食い下がるわけにもいかず黙る。


「結論から言いますと、開条君は無実であると言わざるを得ません」

「なに!?」

「まぁまぁ」


毛原がなおも言うと、教師は肩を怒らすが、校長は更にとりなした。だが校長も、さすがに簡単な事態ではないと気付いたらしい。
何より、希糸が最も動揺していた。


「な、に言って…」

「こうやって我々を呼んだのは、その証拠を見せるためかな」

「はい。事務員の方に話は通してあります」


毛原が合図すると、イナサは扉をノックする。まさか、本当にあの事件で希糸が無実だったことを立証するつもりだろうか。
イナサがノックすると、事務員室から事務員の妙齢の男性が出て来た。心得たように一同を見渡すと、室内に招く。校長、教師を先に通してから、イナサたちに続いて希糸も中に入る。

雑多な小さい部屋には、大きなモニターがあった。複数の映像が小分けになって表示されている。
その中の、録画再生用画面に再生マークがついていた。


「イナサ、話せるね」

「うす。まず、職員室について重要なことを2つお話しするっス。まず1つ、職員室は事務員の方しか開閉できない」

「それはもちろん知っているよ」


校長が言うと教師も頷いた。希糸は初耳だった。
どうやら防犯上、そして残業を防ぐために、職員室の鍵は事務員しか持っていない。校長ですら勝手に開けることはできなかった。


「そしてもう1つ。職員室は、鍵を閉めると自動消灯し、開錠すると自動点灯する仕組みになってるんス」

「っ!」


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