特別な存在−2
雄英襲撃からしばらくして、死柄木たちは今度は保須市において脳無による襲撃を行った。ヒーロー殺しことステインとどっちが社会の関心を集めるかという訳の分からない勝負をして結局負けていた。
死柄木はキレていたが、オール・フォー・ワンの方はこの作戦に乗じて敵連合の名前を広めるところまで計算済みだったらしく、ステインのシンパたちがこぞって組織にやってくるようになった。
ある日、ノックとともにバーの扉が開く。カウンターで死柄木と並んで座っていたイズは、2人揃ってそちらを見た。
「死柄木さん」
入って来たのは義爛、裏社会でも知られる大物ブローカーだ。イズもよく知る人物だが、それよりも義爛に続いて入って来た2人に目が行く。
「こっちじゃあんたらの話で持ち切りだぜ、何かでけぇことが始まるんじゃねぇかってな」
「で、そいつらは」
煙草の煙を漂わせる義爛の後ろから部屋に入って来たのは、くたびれたシャツに黒いジャケットを着た、継ぎはぎだらけの肌をした男。その隣には、クリーム色のセーターにセーラー服の女子高生。
「生で見ると…気色悪ぃなぁ」
「うわぁ、手の人ステ様の仲間だよね!?ねえ!?私も入れてよ!敵連合!!」
またすごいのが来たな、と思っていると、案の定死柄木が苛立ったように2人を指さす。
「黒霧、こいつら飛ばせ。俺の大嫌いなモンがセットで来やがった…餓鬼と、礼儀知らず」
それを黒霧が「まぁまぁ」といなす。義爛の紹介だ、下手な人材は送ってこない。それはイズも十分心得ていた。義爛も部屋に入りながら「紹介だけでも聞いときなよ」と2人を紹介した。
女子高生の方はトガヒミコ、連続失血死事件の犯人として警察に追われている。
「トガです!トガヒミコ!生きにくいです、生きやすい世の中になって欲しいものです。ステ様になりたいです!ステ様を殺したい!だから入れてよ弔君!」
「意味が分からん、破綻者かよ」
死柄木の反応が正しい。まぁ、こちらの社会はこんなのばかりだ。義爛もそれは心得ているのか、話は通じると変なフォローをいれていた。続いて隣の男を紹介する。
どうやら、目だった犯罪はしていないがステインの思想の固執しているらしい。
「不安だな、この組織…本当に大義はあるのか…?まさかこのイカレ女入れるんじゃねぇよな」
「おいおい、その破綻JKすらできてることがお前はできてない。まず名乗れ、大人だろう」
やはり死柄木がまともなことを言っている。それがおかしくて笑いそうになるが、さすがにそれは空気が読めていない。
「今は荼毘で通してる」
「通すな本名だ」
「出すべきときになったら出すさ。とにかく、ヒーロー殺しの意志は俺が全うする」
「聞いてないことは言わなくていいんだよ…どいつもこいつもステインステインと…」
最近ステインのことが気に食わない死柄木は、ゆらりと立ち上がる。殺気が立っていた。黒霧は慌ててゲートの準備をする。殺気に気づいた2人も構えた。
「良くないな…気分が良くない。ダメだお前ら」
トガがナイフを、荼毘が腕を、死柄木が両手を突き出す。それぞれ黒霧が別の場所にワープさせたことで攻撃はいずれも当たらなかった。一瞬のことだったが、荼毘もトガも良い反応だった。
「落ち着いてください死柄木弔。あなたが望むがままを行うのなら組織の拡大は必須」
黒霧は死柄木のそばに顔を近づけ小声で「利用しろ」ということを言うも、死柄木は「うるさい」と吐き捨てた。
癇癪を起した子供のように、死柄木はそのまま部屋を出て行ってしまった。