特別な存在−3
「取引先にとやかく言いたかないが…若いね、若すぎるよ」
死柄木が出て行った扉を見ながら義爛が煙草の煙をため息に変える。それにはイズも完全に同意である。
「殺されるかと思った!」
「気色わりぃ…」
トガと荼毘もこの反応である。トガの方は笑顔のままだ。黒霧は少し申し訳なさそうにしながらも2人に声をかけた。
「返答は後日でもよろしいでしょうか。彼も自分がどうするべきか分かっているはずだ…分かっているから出て行ったのです。必ず導きだすでしょう、あなた方も、自分自身も納得するお返事を」
それはすなわち、彼らを受け入れることに他ならない。今は戦力の拡充と手札を増やすことが肝要だ。
「それはそうと、イズ、お前ほんとにここに派遣されてんだな」
「そうなんだよ義爛さん。てか久しぶりだね?」
「おー、久しぶり」
ひらひらと手を振る。そこでようやく、2人の注目がこちらに向いた。気になっていないわけではないようだったが、やはり死柄木に意識を向けていた。というか、ここにイズがいることに違和感を持てないのだから当然だ。
「はじめまして、トガちゃん、荼毘さん。俺はイズ、まぁ義爛さんの仕事を組織的にやってるところ所属で、ここには派遣で来てます。よろしくね」
「よろしくです!イズ君も高校生なの!?」
「高校生ではないよ、制服って楽だから。因数分解はできないけど人体は分解できるよ」
「あはは!トガも因数分解できないです!仲間だね!」
嬉しそうにするトガはこちらに来て握手する。ぶんぶんと腕を振られ、捲っていた袖がすり落ちそうになる。手を離してそれを直してから荼毘の方を見やると、こちらをじっと見ていた。
「どうかした?」
「ガキばっかりじゃねぇか…派遣されてきたっつってたけど、本当に大丈夫なのかここは」
「おいおい、イズを舐めちゃいけねぇぜ荼毘。これでも数百人、いや、4ケタ単位で人殺してるからな」
「やめてよ義爛さん、仕事で殺しただけで、他にもいろいろできるし」
荼毘は信じがたいような眼で見てくる。疑いたいなら好きにすればいい。イズは特に気にせず、その日はそれでお開きとなった。
***
それから数日もしないうちに、再び雄英を襲撃する計画が持ち上がった。今回は合宿中のヒーロー科1年生を襲うというもので、ついでに生徒の1人、爆豪を拉致するらしい。
すでに警察の捜査によってアジトの場所に検討がついているということは、会社からの連絡で知っていた。恐らく、この計画の成功のいかんにかかわらず大規模な衝突になるだろう。
さすがにそこで警察に顔バレするのは避けたいイズは、うまく理由をつけて敵連合から一時的に距離をおいた。オール・フォー・ワンはそうしたイズの姿勢に理解を示していたが、大事な計画に参加しないイズに対して、死柄木や荼毘は釈然としていないようだった。
そして事前の情報通り、爆豪拉致の数日後にはヒーローたちがアジトを襲撃してきた。同時に脳無の格納庫も襲われる。
神野区を壊滅させるほどの戦闘によって、オールマイトをなんとか引退させることこそできたが、こちらもオール・フォー・ワンが逮捕された。爆豪も取り返され、いったん連合は隠れて再び力をたくわえることになった。
幹部のような者たちは固定され、死柄木と黒霧のほか、荼毘、トガ、トゥワイス、マグネ、スピナー、コンプレスというメンバーで動く。その中にイズも参加している。
警察の目が厳しいうちはそれぞれ散り散りになるという方針となり、イズは事前に決められた通り、荼毘とともに行動することになった。オール・フォー・ワンの指示で、戦闘力が最も高く頭もキレる荼毘との関係を深めておいてくれとのことだった。
それをそのまま荼毘に伝えたうえで、しばらく2人きりで過ごすことになったのだが、荼毘の訝し気な顔は今でも思い出し笑いができる。
それから、奇妙な日々が始まった。