京都不浄王編/前編−8


その後、燐も合流して男子たちは力仕事に駆り出された。何とか燐が持っていたスイカだけ食べさせてもらったが、それ以降まともに休憩もないまま何かを運んだり片付けたりと、地味に疲れる仕事ばかりをさせられた。

日も暮れて夕方、裏方の中庭で大量に出た段ボールをビニール紐でくくって処理していると、ついに廉造が弱音を吐いた。


「はぁ〜、暗なってきたし、一日中力仕事でしんどいわ〜」

「もうすこし踏ん張りや志摩さん」


燐や勝呂は顔色ひとつ変えておらず、体力の違いを見せ付けられる。朝祇も正直疲労困憊だった。


「竜士!」


そこへ、中庭に面した厨房から虎子が顔を見せた。


「あら、男の子たちも、ちょうど良かった。ちょっとこっち手伝ってくれん?」

「あ〜ん、まだ終わらへんのか…」

「情けねえこと言うな廉造」


朝祇はその肩をどついて勝呂たちに続いて厨房に向かう。廉造はぐす、と鼻を鳴らす。


「なんか新幹線の中からずっと朝祇がつれへん…」

「はいはい」


暖簾をくぐって中に入ると、和風のいい匂いに包まれる。大量に積まれているのは弁当だ。


「ここにある仕出し、みんなで出張所の詰め所まで運んでくれへん?ぎょうさんあっててんてこまいなんや」

「うおおお、うっまそおおお!!力仕事は任してください!」

「みんなよう働いてくれて大助かりやわ、ありがとぉ」


燐は美味しそうな弁当に目が眩んだのか、ひょいと簡単に両腕で1つずつ弁当の塊を持ち上げる。相当な重さのはずで、勝呂や廉造ですら1つを両腕で抱えるのが精一杯だ。

何とかそれを出張所まで運び、シュラのところに置く。シュラは椅子の上で胡座をかきながら他の祓魔師を呼んだ。


「お疲れさん、今日はコキ使われて疲れただろ、お前らはもう先に上がって休んでいーよ」

「やたっ、終わった〜!!」


廉造はシュラの言葉にガッツポーズを決めて喜んだ。朝祇もほっと息をつく。

燐が代わりに全員分の弁当とシュラに渡された缶ジュースを受け取り、それについて子猫丸と廉造とともに外へと向かう。勝呂は何やらシュラと話していたが、やがて軽く頭を下げてこちらへやって来た。

すっかり夜空となった中庭に出ると、追い越して先頭に出た勝呂に燐が声をかける。


「おい勝呂!弁当!」

「……」

「…ったく、くれーな、何も食ってねぇからだぞ?食っとけ!ほらゴリラ!」

「…やかまし!!」


勝呂はそう怒鳴ると、弁当とジュースは受け取って違う方向へ向かってしまった。ピリピリとしていて、とてもじゃないが話しかけられない。


「う、怒らせちった…子猫丸!一緒に食わない?」

「…僕は家族に挨拶してきたいから…」

「…そっか、それは大事だな…」


子猫丸も顔を背けてどこかへ行ってしまった。燐は仕方なく近くの岩に腰かけた。やはりここでも避ける理由がない朝祇は、燐の隣に座った。


「俺のもちょうだい」

「…おう、一ノ瀬はそーだったな」


少し嬉しそうにして、燐は弁当とジュースを渡してくれた。普通に食べたかったからでしかないが、この流れなら燐と食べるのが普通だろう。

一方廉造は期を逸した。燐からは離れたいが朝祇が残ってしまい、廉造は渋々ここで食べることにしたらしい。


「じゃあ俺も…」

「なんだよ、おめーは俺の弁当食えねえんじゃねえのかよ」

「えー…」


ジュースを煽った燐は、 不良よろしく廉造を睨み付けた。廉造はもう困惑するしかない。面白すぎか、とはさすがに言わず、フォローに回ることにした。


「まぁそう言わずにさ。ほら、」


朝祇は燐から弁当とジュースを受け取り廉造に渡す。廉造は苦笑いしながら、離れた岩に腰かけた。


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