学園七不思議−3
その夜、21時に雪男から全員にメールが送られ、急遽23時に集まるよう指示された。休塾かと思えば突然の召集に何事かと思いつつも、言われたからには従わなければならない。
夕飯や風呂などを一度済ませてから、制服に着替えて指定された場所に向かう。廉造は眠そうな様子を隠さず、珍しく口数が少なかった。
学園の下層、丘から突き出すアーチ建築の空中埠頭のひとつの近くに集合すると、続々と燐、出雲、宝も集まる。やがて雪男も到着し、定刻より少し早く雪男は始めた。
「皆さん3日振りですね。休塾が続いた上こんな時間に召集してしまい申し訳ありません。今から特別課外授業を始めます」
特別、と冠するそれに聞き覚えはなく、全員が訝しむ。とはいっても廉造はあくびをし、燐は目が開ききっていない。髪型がオールバックのシックな感じになっているのはどうしたのだろうか。
「この授業はフェレス卿からの直々の任務を兼ねているんです。僕についてきてください」
メフィストの直接の指示であれば、こんな時間なのも納得はした。何か意味があってのことだろう。
雪男に続いて歩き始めると、しえみが燐の髪型に気付いた。
「燐、いつもと髪型違うね」
「えっ、あぁ、メフィストの晩餐行ってて…」
燐は気になったのか前髪をグシャグシャとして元に戻す。晩餐と聞いて、手紙にあった今晩の誘いに行ったのだと分かった勝呂と子猫丸は振り返った。
「行ったんか!」
「どやったん?」
「んー…超旨くて辛いカップラーメン食ってきた」
「軽い嫌がらせやんか…」
晩餐と銘打っておきながらのメニューに、廉造は呆れたように言った。そういえばもんじゃを奢るあたりもケチ臭い。
少しして、雪男は下層の地面に建ち並ぶ住宅街を見下ろす長い歩道橋の上で立ち止まった。塾生たちも止まり、雪男はこちらを向いて何やら紙を取り出す。
「さて皆さん、最近、"学園七不思議"が流行っているのをご存知ですか?」
「あー、女子が盛り上がっとるなぁ」
「確かに最近よぉ話聞きますね」
最近になって学園町で流行っているものだ。噂好きの女子を始め、刺激を求める良家のご子息たちを賑わす怪談話である。
「皆さんにはその七不思議の元になっている悪魔と戦ってもらいます」
「…え、俺らだけでですか?」
皆さん、という言い方に勝呂は若干動揺した。任務という形であれば、これまでは必ず祓魔師が一緒についていた。学園内ということで、中級以上が入ってこれないという状況下では自然と低級悪魔に絞られるからだろうか。
「そうです。どう作戦を立ててどう戦うか、僕は見守りますが口は挟みません。すべて皆さんだけで協力してやるようにとの支部長命令です」
そう言うと、雪男は手に持っていた紙を全員に配った。A4の紙に書いてあるのは、七不思議の一覧だ。
1.真夜中に学園を彷徨う白無垢
2.真夜中にメッフィーランドのファウスト像が動き出す
3.女子寮のトイレの繭子さん
4.高等部・肖像画の間に自分の死に顔の肖像画
5.真夜中に無人で走る路面電車
6.高等部・化学実験室に現れる蒐集鬼部屋
7.絶対に辿り着けない屋敷
「そして今から戦ってもらうのは1番目、真夜中に学園を彷徨う白無垢です」
話では、真夜中に自分の姿を見た男性に襲いかかるゴーストで、近くに女性がいると現れないのだという。
そしてそれを雪男が説明している最中、少し離れたところの空中埠頭にゴーストが現れたのを出雲が発見した。
埠頭の先に、白無垢がぼんやりと光っている。
「現れましたね。ではこれより任務開始です。チームワークを忘れずに、始め!」