学園七不思議−6
その後も、塾生たちは七不思議の解決に当たった。
女子トイレの繭子さんはしえみと出雲の連携で解決し、二人が京都で抱えたらしい蟠りはなくなったようだ。
続いて真夜中に動くファウスト像、無人路面電車と燐が炎を使って倶利伽羅で叩ききった。おかげで他の塾生にはまったく出る幕なしだった。
もちろん宝についてもそうで、後に1個上の2年で、大企業の"宝ホビー"の社長子息なのだと勝呂に教えてもらった。
そんな燐に業を煮やした勝呂は、最近恒例となった、朝の登校時間に廊下で集まって男子で話す会にてついにぶちギレた。
「奥村ァ…久々にお前に殺意沸いたわ…!」
「す、すまん…」
「躊躇いもせず剣抜きまくりよって、いつまで一人で戦っとるつもりや、あぁ!?」
反省する燐に怒る勝呂は完全にお父さんのそれである。ガヤガヤとうるさい朝の廊下でなければ親子か兄弟にしか見えなかっただろう。
「え〜、でもなんでムリして俺ら戦うんです?強い人が戦ったらええやん」
「志摩お前っ…!」
「だって力の差が神とウンコくらい開いとるんですよ…?」
今度は別の息子がそう言い出して、勝呂パパはまた説教を垂れ込もうとした。そこで、子猫丸が歩いてくる男子に気が付いた。
「あれ、奥村君が言うてた後醍院君やない?」
「あっ、ほんとだ!ちょっと行ってくる!」
駆け出した燐を特に止めないあたりも、勝呂の大人っぽい優しさだ。いい男過ぎだろ、と思いつつ燐を見守る。
「後醍院!お前大丈夫か!?」
「あ……奥村君、怖いけど、休み続けてもいられないと思って…」
「そっか!」
快活に笑う燐の背後を、薄く笑いながら後醍院が確認する。それに気付いた燐は「ん?」と短く問い掛けた。
「い、いや…この前奥村君に尻尾が生えてるように見えたんだ!どうかしてたんだな…」
「ああ…まぁ、隠しててもしょーがねーか。俺、半分悪魔なんだ!」
そうして躊躇いもなく尻尾をシャツから取り出して見せた。朝の光に照らされる黒いそれに、後醍院は驚いて目をまん丸にしていた。燐の行動に朝祇たちも驚いた。
「普段は隠してるけどな!てかそんなことより、今やってる任務が上手くいったら"悪魔が見えなくなる目薬"がもらえるんだ!もうしばらくの辛抱だから安心しろ!」
そう言ってバシ、と背中を叩いた。男子には当たり前の行為だったが、後醍院は痛みに呻いた。悪魔として平常値より遥かに力があることを自覚する燐は、焦ったように謝った。
「あっ、悪い、つい力が…」
「ご、ごめん……」
そして後醍院は、そそくさと目線を合わせずに離れていった。
***
その日の放課後、塾生は高等部の校舎の一角にある、肖像画の間に集まった。2階建ての吹き抜けの空間で、ドーム状の天井に設けられた天窓から夕日が差し込む。オレンジの光に照らされた無数の肖像画が壁面を埋め尽くす様は不気味だ。
この部屋にある七不思議は、自分の死に顔が映る肖像画があるとか、見るたびに違う顔が映る肖像画があるといった不定の内容である。
一同で雪男を待っていると、突然出雲の悲鳴が響いた。
「ぎゃあああ!!!」
「出雲ちゃん!?」
顔を真っ赤にして後ずさった出雲の前には、メフィスト。一体何があったのかは、恐らく出雲の恥ずかしそうな様子からして察することしかできない。
「今日は私が代理で皆さんを見守ります!奥村先生が急きょヴァチカンに召喚されてしまいましたので…確か残るのはこの肖像画の間の七不思議だけでしたね」
メフィストは天井のシャンデリアにある燭台に灯をともして言った。それに子猫丸は「いえ、」と訂正を入れる。
「まだ3つ残っとるはずでしたけど…」
「おや?…あぁ、」
メフィストは説明していなかったことに気付いたのか、残りの2つについて説明を入れる。残った七不思議のうち、絶対に辿り着けない屋敷はしえみの実家である祓魔屋、もうひとつの蒐集鬼部屋はメフィストの私物だそうだ。
「というわけで、残る七不思議はこの肖像画です!『家族の肖像画』といい、私のイタズラ…ゴフンゲフッ、コレクションの一揃いだったのですが、最近この絵を見た生徒が心を病むケースが続出していましてね。これでは祓魔も致し方ありません」
この七不思議についての説明も終えると、メフィストはパチンと指を鳴らしてピンク色の煙に包まれた。直後、空間の階段を上がった2階部分に現れ、宙に浮かぶ椅子に腰掛けた。その手にはゲームが握られている。
「それでは始めましょう。私はここで見守っていますので」