学園七不思議−7




「まずは敵の分析やな…というかあの絵、俺には『家族の肖像』に見えへんのやけど皆にはどない見えとる?」


まず勝呂が仕切り始めた。確かに勝呂の言う通り、肖像画には女性がひとり描かれているようにしか見えず、家族とは受け取れない。朝祇の他に燐、しえみ、子猫丸も同意した。


「じゃあ俺もそれで!」

「じゃあってなんやねん!神木は」

「…女かもね」

「かも!?皆ほんとのこと言うとるんか!?」


一方で、廉造と出雲はそんな煮え切らない返答だった。勝呂は流したが、明らかにこれは嘘だ。本当にそう見えているのなら、聡い二人がイタズラに場を乱すようなことを言うとは思えない。
そもそもこの七不思議だけ内容が定まっていないのもおかしい。死に顔だったり見るたびに異なる顔だったり、これだけ不確かなのだ。
この悪魔はさらに、見た者たちの心を病ませる被害をもたらした。

これらを合わせると、廉造と出雲にとっては言いたくないものが見えたと考えるのが自然だ。二人はそれぞれ、イルミナティについての人には言えない秘密を抱えている。二人にとってイルミナティは警戒すべき存在。
この二人が仮に警戒しているイルミナティを肖像画に見出だしたとすれば、一般の被害者たちが死に顔や異なる顔を見て心を病んだことと合わせると、「自分にとって恐れるもの、嫌なもの」を映すということが言える。
あと少しで正解なのでは、というところで、燐が「俺が切っちゃえば早くねー!?」と言い出した。


「お、奥村君…」

「出た!またお前…!」


子猫丸と勝呂は嗜めるが、燐は食い下がる。


「でもそれでうまくいけば、みんな危ない目に遇わなくて済むだろ!?」

「俺も奥村君の意見に賛成〜」

「志摩さん!」


志摩も賛同すると、燐は制止も聞かずに抜刀しながら走り出す。そして、肖像画を真っ二つに両断した。


「や、やったか!?」


額縁やガラスケースごと割れた肖像画は力なく床に転がる。だが、突然そこから極彩色の絵の具をぶちまけたような色をした塊が飛び出した。直後、室内はまるで真夜中のような暗闇に閉ざされる。


「っ、みんな、」


慌てて呼び掛けたが、誰もいない。暗闇なのに、不思議と自分の姿がはっきりと分かる。同じように、少し離れた場所に人集りができているのが見えた。見慣れた制服に駆け寄ると、突如として彼らは騒ぎだす。


「裏切りもの!殺せ!」

「志摩…お前だけは許さん…」

「志摩さんにお似合いの最期やね」


まず目についたのは明陀宗の人々。志摩家や勝呂、子猫丸が誰かにそう怒鳴っている。


「志摩、お前は死んでも仕方ないやつだ」

「さよなら、志摩君」

「せいせいするわ」


そして、燐やしえみ、出雲も侮蔑の目差しをしている。他にも、色々な人々が口々に罵詈雑言を吐いていた。その中心で血を流して倒れているのは、他ならぬ、廉造だった。


「さぁ、満場一致の有罪判決です!処刑しましょうか!」


そして、メフィストがそう高らかに宣言する。廉造の真上に現れたものは、大きな鎌。断頭台のような様相だ。
咄嗟に駆け寄ろうとして、ふと気付く。それは、先程まで考えていたからこそ頭の中に沸いたもの。


(こいつの正体は…人の恐れるものに姿を変える、擬態霊(シェイプシフター)だ…!俺が恐れている光景を投影しているだけ…)


擬態霊、人の恐怖の鏡となる悪魔。朝祇にとって最も恐れている、廉造の居場所がなくなり、すべてからその存在を否定される未来が映し出されていた。こんなものはまやかしだ。


「黄龍、一発頼む」

『分かった』


黄龍に呼び掛けた瞬間、激しい痛みが頭を襲った。地面が傾くような感覚と共に、意識が急激にクリアになっていく。
ふと痛みが収まり視線を上げれば、元の空間に戻っており、子猫丸が駆け寄ってくるところだった。


「良かった、覚めたんやね!こっちや!」


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