学園祭と″そのとき″−4
その放課後、祓魔塾にて、授業後に燐がダンスパーティーを巡って騒ぎ始めた。真ん中最前列に燐と朝祇、その後ろに子猫丸と勝呂、通路を挟んで教室右側最前列に出雲、その後ろに廉造という並びだ。宝は離れたところにいるが、二学期になってから何となく、全員近いところに座るようになっていた。
「ダンスパーティーどーすんだよ!俺ぜってえ参加してえ!だってきゃみーとかユーバーとか有名なアーティストいっぱい来るんだぜ!?」
隣で立ち上がる燐がやかましい。ガタガタと揺れる机の筆記用具などを片付けながら、燐の主張を聞いてやる。
「なのに女子同伴とか…しえみは学生じゃねーし、出雲は…」
「あたしは参加しないから」
「俺他に女友達いねーよぉおお!!」
「…祭ごときに浮かれてバカみたい」
出雲も鞄にテキストなどを詰めていて、目線を合わさずに返した。
「勝呂と子猫丸はどーすんの?」
「僕も参加せんわ、誘えるよな女の子おらへんし」
「くだらん」
子猫丸は苦笑し、勝呂も教材を鞄にしまって一言そう返した。真面目な2人だ、積極的でないだろうことは想像に容易い。
「一ノ瀬は行くだろ?」
「行かないよ、誘われたけど」
「せやで、朝祇はいもしない兄貴を危篤にして女の子を断りつつええ顔保ったんやで」
廉造が代わりに説明すると、燐はひどく恨めしそうにこちらをジト目で睨んできた。
「な、なんてやつだ…!敵!」
「あー…ごめんな、燐お兄ちゃん?」
「うっせー!これ以上モテる弟なんていらねーよ!!つかなんだよ、お前ら揃ってお通夜かよ!?」
尻尾を揺らしながら喚く燐に、出雲はがたりと音を立てて立ちあがり、冷たく言い放つ。
「あのね、年一回の祓魔師認定試験が3ヶ月後に迫ってるのよ。あたしは1発合格したいの…!」
出雲は鞄を背負い、革靴の踵の音を鳴らして教室の出口へと向かう。
「ただでさえ休塾続きで授業が遅れてるし、二学期から実技講習が始まって時間ない。じゃあね」
そう言い残し、出雲は教室を出ていった。実技講習とは、各称号ことに設けられた実際の動きをともなう講座のことだ。朝祇は手騎士志望者のための応用悪魔学と無印章召喚術、竜騎士志望者のための小型携帯銃射撃訓練と魔法弾作製講座を履修している。
「…ふん、初めてあいつと気ィ合うたわ」
「え、お前はどこへ?」
「銃火器の実技講習や。俺も詠唱騎士と竜騎士、両方1発合格狙っとるさかい、色恋にうつつ抜かしとる場合やないんや」
続いては勝呂が立ち上がる。朝祇もこれから小型携帯銃射撃訓練の講習があるため、合わせて立ち上がった。勝呂はバズーカを志望しているため、大型銃射撃訓練である。
バズーカは直接的な攻撃というよりも、致死節判定弾という致死節の分からない悪魔の致死節を明らかにする魔法弾を使うことや、魔法円を展開させて悪魔の力を借りることなどに使われる。詠唱騎士の力と合わせるため、勝呂が志望している効力である。
「俺も竜騎士と手騎士目指してるから余裕ないんだ。まっ、人それぞれだと思うし、頑張れお兄ちゃん」
「誰がだ!じゃあな!」
燐たちに手を振って、勝呂の後に続く。さりげなく扉を開けて支えてくれている辺り、勝呂もモテるんだろうな、なんて思った。
廊下を歩いていると、異なる射撃場への分かれ道で沈黙を破って勝呂が口を開いた。
「…そういや、お前最近、元気ないんやないか」
「あー…勝呂もそう見える?」
「おん。無理は厳禁やぞ」
どうやら勝呂にもバレていたらしい。やはり京都組は隠すのが難しいようだ。それが少し嬉しくもある。
朝祇は笑って手を振り、小型銃の訓練場へ続く廊下に向かう。
「…ありがと、お父さん」
「誰がや!じゃあな!」
そう言って別の廊下を進む勝呂は、燐そっくりでちょっと面白かった。