島根イルミナティ編/後編−6


マイクが切れると同時に、キメラゾンビは燐たちのいる場所を飲み込んでいき、慌てて一同は別の場所に移る。
すると、しえみが壁から中央塔に繋がる桟橋に人影を見つけた。


「神木さん!?」

「なっ!」


視線を追った燐も、桟橋を研究員に連れられて進む出雲の姿を捉える。急いで駆け出そうとしたが、朝祇のことも気になってしまった。


「一ノ瀬はこっちでなんとかする、行け奥村ァ!!」


それに勝呂が察して叫ぶと、燐は考えることもせず駆け出した。勝呂がいるなら大丈夫だし、雪男もいる。


「出雲っ!!助けに来たぞ!!」


そう怒鳴りながら桟橋に斬りかかるが、サッと影が飛び出してきて倶利伽羅を弾き返す。


「そーはさせへんで」

「志摩っ…!?」


壁に叩き付けられた燐に、廉造は桟橋の欄干から追撃のために飛び掛かる。燐は壁を蹴って違う方向に飛び出すが、廉造はこれまで見たことのない速さで追い掛けてくる。


「どーしちゃったんだよお前!?友達だろ!!」

「まだそないなこと言うてるんや?」


追い付いた廉造は錫杖を目にも止まらぬ速さで振り、燐でもついていくのが精一杯だ。金属どうしのぶつかり合う鋭い音が響く。


「せっかく忠告してあげたんになぁ?」

「くっ、やめろっ!」

「ぶっ!?」


燐はそこで、剣を引いて拳を廉造に叩き込んだ。廉造は思いがけない攻撃にぶっ飛ぶ。
まずは燐は桟橋に降りると戦闘員を瞬殺し、出雲に手を差し伸べた。


「来い!早く!!」


なぜか巫女服に身を包んだ出雲は目を見開くが、少し間を置いて、絞り出すように言った。


「……勝手なことしないで…!これは、あたし一人の問題よ」

「はぁ!?」


その直後、燐は黒い炎の塊に吹き飛ばされた。廉造は夜魔徳を召喚し、その黒い炎を体と錫杖に纏わせていた。
燐は吹き飛ばされた衝撃で桟橋から吹き抜けを落下し、遥か下の地面に向かってまっ逆さまになった。
廉造は詠唱しながらその後を追う。


「うぅあぁああ!!」

「大威徳忿怒要訣 火頭金剛槍」


なんとか塔の根元に着地した燐だったが、黒い炎を鋭い槍の形で錫杖に纏わせた廉造が、それを叩き込む。すんでで燐はそれを避けた。


「うおっ、てめえ今マジだったな!?」


いまだ納得できないまま、塔の最下層に接続する連絡橋に飛び乗って体制を整える。


「どうしてだよ!?俺たちはお前らを助けに来たのに!!」

「出雲ちゃんやったらちょーど俺たちのいるこの真下におるはずやで」


塔の根元は分厚いコンクリートの床になっており、さらにその地下に実験室があるらしい。さらりと自分のことは省いて廉造は下を指差した。


「助けたいなら助ければええんやな〜い?あっ、きたきた」


そこへ突然、壁がボコボコと波打って、下層部で思いきり破裂した。そして、その中から巨大な肉塊となったゾンビが吹き出してくる。


「こいつらは確かより強いエネルギー体に引き寄せられるらしいんや。奥村君の青い炎ある間はええ囮になってくれて助かるわぁ」

「おわっ!?」


細い肉の触手なようなものが伸びてくると、燐の足を瞬時に掴んだ。身動きが取れなくなったところで、廉造は再び錫杖を槍として突き出してくる。


「あらら、そんなザマやと誰も助けられへんのとちゃう?俺とこのバケモン殺る気でいかな」

「お、前、ほんとに志摩か!?騙されて…いや操られてんだ!そーじゃなきゃ、こんなこと…!」

「これも本当の俺や」

「ぅぐっ…!?」


躊躇なく、廉造は錫杖の先端、黒い槍状の炎を燐の左胸に突き刺した。一瞬で全身の力が抜ける。


「てめぇっ…勝呂と子猫丸は……一ノ瀬は、どーすんだよ…!」


廉造は答えない。だんだんとゾンビに飲み込まれていき、燐は身動きのできないまま肉塊に包まれていく。しかし廉造は離れ間際に、小さく言った。


「朝祇を、頼む」

「っ!?」


直後、視界は闇に覆われた。


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