島根イルミナティ編/後編−9


燐が開けた大穴から実験室に入ると、燐が包帯だらけの女性を抱えているところだった。近くには巫女服の出雲が倒れている。


「奥村!神木さん!」

「一ノ瀬!!無事だったか!!」


パッと振り返って安心したように笑う燐だったが、その上のハッチが開くと、そこから大量のゾンビたちが落ちてきた。ゆめタウンのゾンビだ。


「うわぁあ!?」

「ちっ、勘弁してくれ…」


燐の近くにいたゾンビを実弾で撃ち抜くと、穴から候補生たちを乗せたクロが飛び込んでくる。ようやくこれで全員が揃った。


「兄さん!その人は!?」

「出雲の母ちゃんだ!クロに乗せてくれ!」


なんと、包帯で巻かれた女性は出雲の母親らしい。ぐったりと衰弱している。
雪男は出雲に駆け寄り、息も荒く起き上がる出雲の様子に険しい顔をする。


「神木さんは悪魔の憑依状態だ…まさか、九尾か!?一刻も早く専門の祓魔をしないと!」

「もう…手遅れよ…早く行って…!」


すでに実験は始まってしまっていた。出雲には九尾が憑依し、顔にそれによる炎症が現れている。その間にも集まるゾンビたちを、燐と朝祇で倒していくが、少ししたらまた復活してしまう。


「うっ、ああああ!!」

「神木さん!?」

『あれはもう…飲まれる』


黄龍は出雲の様子に固く言った。その直後、出雲は狐のような見た目に変化して、9本の尻尾を生やし、ケタケタと笑い始めた。


「あーはははハははは!!!!」

「か、神木さ、」

「ウるさいっ!!」


禍禍しい妖気が溢れだし、しえみたちを吹き飛ばす。完全に九尾にのまれてしまったのだ。このままでは人間に戻れなくなってしまう。
勝呂はバズーカでゾンビを薙ぎ倒しながら、雪男の方を見る。


「奥村先生!九尾はどう祓魔するんですか!?」

「まだ方法が解明されていません!むしろ神木家がその専門です、神木さんのお母さんの意識が戻れば…!」


全員で一度出雲から離れると、クロから 降り立つ影がひとつ。包帯で全身を覆われていようとも、しなやかに地面に立っている。


「…あぁ…見える…出雲…!」


娘の声を聞いて目覚めたのか、母、玉雲がしっかりとした足取りで出雲に近付いていく。


「我が娘の御霊屋に鎮め奉らるる玉藻御前の御霊に請祈願申したもう」


玉雲はそう唱えながら臆することなくゾンビの中を進んでいき、出雲の攻撃を交わしていく。その動きは、まるで神楽を舞うようだった。
玉雲のしていることに気付いた雪男は、ダブルハンドガンでゾンビを撃ち始めた。


「皆さん!僕たちで2人の周囲のゾンビを一掃します!」


恐らく玉雲は、自らに九尾を憑依し直そうとしている。出雲を九尾から解放するために。
それを助けるべく、雪男以下候補生たちはゾンビの掃討を開始した。朝祇は麒麟に手伝ってもらいながら、銃でゾンビの頭を正確に狙っていく。


「気張れや神木ィ!祓魔師認定試験が3ヶ月後に迫っとるんやなかったんか!?」


勝呂はそう怒鳴りながら、バズーカでゾンビを殴って薙ぎ倒す。


「なんで神木さんが僕らから距離とりはるのか分かったけど…やっぱそのクセやめてもらわんと!!」


子猫丸は落ちていた鉄パイプでゾンビを殴り付け、頭を叩き割る。


「神木さん!必ず助けるよ!!」


しえみは緑男を使ってゾンビに植物を生えさせて動けなくする。


「手騎士どうし頑張ろうよ神木さん!だから帰ろう!!」


朝祇も、出雲が少しでも九尾に打ち勝てるよう言葉をかけながら、ゾンビを次々と銃弾で貫いた。


「出雲…っ、俺たちもいるぞ!!」


そして燐は、倶利伽羅でゾンビを斬ってそう叫んだ。祓魔師は一人じゃない。もう、散々言われたことだった。

ついに、玉雲は神楽を終え、出雲の米神に手を当て、抱き締めるように詠唱する。


「いざ帰りましませ我が御霊屋へ、畏み畏み申す」


その瞬間、光とともに出雲から狐の尻尾が消え、妖気も失せる。
出雲は倒れ、玉雲も床に臥した。近くにいたしえみと朝祇はすぐに駆け寄り、他のメンバーもこちらに走る。


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