島根イルミナティ編/後編−11


決定的な一打を与えるのであれば、朝祇が麒麟たちを使って大技を仕掛けるのが手っ取り早い。そう言おうとしたところ、出雲が凛として立ちあがり、候補生たちの合間に立った。その両脇には、いつもの白狐を従える。


「あいつはあたしが倒す」

「出雲!?」


燐は心配そうに呼び掛けるが、出雲は存外しっかりと立っていた。


「でも祝詞を唱えてる間、あたしは無防備になる…だから、お願い」


そして、強い決意を宿した目で、候補生たちを見渡した。


「みんな、あたしを助けて!!」


出雲は振り返ると、玉雲とその側に控えるしえみを見遣る。心配そうなしえみと、穏やかな顔の玉雲。出雲はしえみに向かって言った。


「…あんたは、母さんを守っててくれる?」


こうやって素直に頼むことなど初めてで。しえみは息を飲むと、目の端に涙を浮かべながら強く応えた。


「当たり前だよ!!」

「そーだ!」


それに続き、燐は出雲の額にデコピンをかました。びくりとする出雲に、燐も力強く頷く。


「そのために来たんだからな!!」

「言われるまでもないわボケ!!」

「微力ながら掩護します!」

「任せて、神木さん」


勝呂、子猫丸、朝祇も続いて、それぞれ武器を構えた。最後に雪男も銃弾を装填し構える。


「やってみる価値はありそうですね。全員で神木さんの詠唱を助けましょう!!」


男子組は勢いよく散開し、出雲を狙うゾンビや外道院の触手を次々と撃退していく。朝祇は麒麟に乗ると、空中から俯瞰して出雲に近付くものを排除していった。
そして、出雲は目を閉じて平手を打ちながら詠唱を開始する。


「あめつちに きゆらかすは さゆらかす かみわがも かみこそは きねきこゆ きゆらかす」


平手を打つ度に光が瞬き、空気が張り詰めていく。


「すめがみの よさしたまえる おおみこと ふみゆくことぞ かみながらなる」


そして両手を横に掲げると、そこに光が集中していった。やがてそれは形を成し始める。


「ひらでもも ひらでうちあげ うちならし」


その光は、左手に扇、右手に神楽鈴となって現れ、シャン、と音を鳴らしながら詠唱が続けられる。


「まいたち まいいで まいそき まいふしつつも おろがみもまつらくともうす」


最後に頭にティアラ型の冠が現れ、その両端から紐と金の飾りが振れる。そこで白狐がサッと飛び上がった。


「いくちひとの つみあく あわれとおもい かぜの あめの やえぐもを ふきはらうがごとく あく はらい さらしめたまわん」


そして、白狐はなんと人型となり、輝きを放ちながら優雅に着地した。外道院は何とかして出雲を止めようとするが、朝祇たちがそれを許さない。
悪祓い去らしめ給わむ、まさにこの外道を今こそ祓うときだ。


「さきみたまの さわやかに くしみたまの あきらかに。ひと、ふた、み、よ、いつ、む、なな、や、ここのたり」


ウケという狐には弓矢が、ミケには刀が光とともに現れ、ミケは走り出す。


「ふるえ ゆらゆらふるえ 鎮魂の祓い!」


ミケが刀を外道院の頭に突き刺した瞬間、ウケが放った矢が雷撃となって刀に落とされる。瞬間、外道院は瞬く間に劫火に包まれた。


「ブギィイイイイ!!!」


その聖なる炎は外道院を燃やし、外道院は力なく倒れると収縮していった。おおよそ元の大きさくらいにまで小さくなっただろう。


「エリクサー実験の成功者だとしたらこんなもんじゃ死なないわ。それに、…そいつには、まだ…話がある…」


しかし本調子でないまま大技を決めたため、出雲はついに気を失った。同時に白狐も消える。
外道院は倒されたが、辺りにはまだゾンビたちがいる。しかも、かなりが復活して起き上がり、その数は60を越しているだろう。朝祇もそうだが、長い戦いに全員疲弊しているのだ、これ以上はここにいられない。


「神木さんの救出任務は完了しました!いったん引いて増援部隊の到着を待ってから仕切り直しましょう!」


雪男も同じ判断をした。撤退を命じるが、勝呂と燐が食い下がる。


「待ってください!まだ志摩が!」

「そーだ!志摩も連れ戻す!!」

「気持ちは分かりますが…」

「いや〜、みんなさすがやなぁ」


そこへ、件の廉造の声が落ちてきた。
見上げれば、穴の開いた天井の淵に笑顔で立っている。


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