島根イルミナティ編/後編−12
「ってもう敵どうしやし、呑気に感心もしてられへんか〜。とっととずらかろ、」
廉造は夜魔徳を背後に従え、消炭となった外道院を炎に包んで回収した。そして踵を返したが、勝呂が大声で怒鳴った。
「待て!!!」
廉造は動きを止める。勝呂は怒鳴ったわりに、絞り出すように続けた。
「…俺のせいか…!」
「…ちゃいます。これは俺のためです。そんじゃ!皆さんお達者で〜」
その笑顔も、快活な声も、変わらない。変わらずに廉造は闇へと消えていった。朝祇には見送ることしかできない。誰にどんな秘密を打ち明けるのか、それは朝祇の役割ではないからだ。
一瞬の沈黙は、銃声でかき消される。雪男がゾンビに放ったものだ。すでに囲まれようとしていた。
「皆さん!今すぐに脱出しないと…!僕は弾が尽きた…!」
「俺に任せろ!!」
弾切れとなった雪男に代わり、燐が刀を構える。恐らくサタンスラッシュとやらをしようとしたのだろう。
しかし、そのゾンビたちは何かに突き刺さり、三体まとめて壁に叩き付けられた。
「坊!ご無事でしたか!!」
「き、金造!?」
なんと現れたのは志摩金造。その後ろからは、宝生青や京都の祓魔師たちなど黒服が次々と実験室に入ってきていた。
「この場は俺たち京都出張所、坊救出部隊にお任せくださいッりゃあああ!!!」
金造はアホといわれど中二級、錫杖でゾンビたちを薙ぎ倒していく。突然のことに呆気に取られていると、青が駆け寄ってきた。
「…ただの増援部隊です。先遣隊の皆さんお疲れさんです。京都、三重、松江出張所から混成部隊が編成されまして、すでに稲生周辺、制圧されました」
***
イルミナティの職員たちが使っていたエレベーターから、一同はゆめタウン稲生へと戻ってきた。施設内のゾンビたちは中庭に集められており、祓魔師たちが施設内のゾンビや生き残りを探して走り回っている。
おきつね横丁の飲食店もすべて摘発され、観光客は保護されて病院に送られた。
候補生たちも病院に搬送されることになっており、出雲は先に運ばれた。
ゆめタウンのエントランスから外のバンへと向かう候補生たち。朝祇は、ふと気になることができたためその列を抜けた。
「一ノ瀬君!?どうしました!?」
「ちょっと聞きたいことがあって!すみません!」
戸惑う雪男たちには悪いが、朝祇は走ってエントランスで指示を出している志摩八百造のところへ向かった。
「あの!」
「ん?おお、一ノ瀬君!先遣隊やったんやろ、お疲れ様」
「ありがとうございます…あの、もうゆめタウンの捜索は終わりましたか?」
「いや、これから14、15階の指示出すとこや。お、ちょうど来たな」
すると、そこへ柔造とその部下の祓魔師たちがやってくる。祓魔1番隊だろう。
柔造は朝祇に気付き、驚いて駆け寄る。
「朝祇君やないか!無事やったんやな」
「お久しぶりです。はい、なんとか」
「柔造、これから最上階の指示を出す。が、一ノ瀬君、どうしたんや?」
「…実は、」
朝祇は、任務中に離婚した父と会ったことを話した。父、女郎花高志はエリクサー実験によってキメラゾンビと化し、祓魔した。
もしかしたら、高志だけでなく、浮気して、離婚後に結婚した新しい家庭の家族も巻き込まれているのではないかと危惧していたのだ。
「そ、そないなことが…なんと言えば…」
八百造は絶句して、話を聞いていた柔造や他の出張所の祓魔師たちも痛ましそうにする。
「…今んとこ、13階までで女郎花っちゅうプレートの部屋はなかったで」
「あ、あの、それなら、最上階の捜索に同行させてもらえませんか?」
八百造は名簿を見て、該当する部屋がなかったことを確認する。女郎花などという名字が被っているわけもない、今のところはまだ見つかっていないようだ。
「柔造、一ノ瀬君頼めるか」
「任せたってや。ほな行こか」
柔造は優しく言うと、朝祇を同行させることにしてくれた。礼を言って、朝祇は1番隊についていく。正直、体力はもう限界だったが、これを確認しないことには休める気もしなかった。