すぐそばで−5
執務室のメフィストのデスク前に、燐たちは現れる。朝祇と宝は離れた席に座ったままだったため、反対側の扉近くに出現したようだ。
ふかふかのカーペットに座って呆然としていると、突然、頭上から拍手が聞こえた。
「Holy shit!フェレス卿の能力っていっつもワクワクしちゃうよ!まさに魔法って感じだ。こんにちは、僕はルーイン・ライト、みんなよろしくね!」
「ライトニング!?」
勝呂たちは驚愕の声を上げる。朝祇も驚いて見上げると、ライトニングが抱え起こしてくれた。
「大丈夫かい?一ノ瀬君」
「ありがとうございます…お久しぶりですね」
「そうだねぇ」
「…お風呂の方も久しいようで」
「あは、バレた?」
ルーイン・ライト、別名ライトニング。詠唱と召喚において右に出るものはいない、四大騎士のひとりだ。そして、朝祇が1週間だけ世話になった人でもある。
「エンジェルや三賢者のお加減はいかがです」
メフィストは燐にライトニングの説明をする勝呂たちの会話が終わるのを待って、そう切り出した。イルミナティのテロで負傷したことを案じている。形だけだろうが。
「えー心配してくれるんだ!エンジェルはあと2、3日もすれば復活するよ。三賢者もエンジェルのおかげでかすり傷程度だしね」
そう言いながらライトニングは帽子を外してガシガシと頭を掻いた。埃やらフケやらが舞い、朝祇はすぐに離れる。
「ひどいなぁ」
「近付かないでくださいマジで」
「ちょ、一ノ瀬お前なんちゅーことを…!」
辛辣な物言いに勝呂が慌てるが、ライトニングは快活に笑う。
「ははは、まぁこの前もすぐこんな感じになったしね」
「以前、一ノ瀬君を米国に修行に行かせたとき、面倒をみていただいたのが彼です」
「そうなんか!?」
その距離感に疑問を持った勝呂に、メフィストは何でもないように説明する。本題を早く話したいようで話したくない、そんな感じがした。
「…ライトニング、そろそろ本題に」
「そうだね、ごめんごめん。皆座って」
室内にあった椅子を寄せ、執務机の前に円を描くように並べる。そこに候補生たちが座り、メフィストは執務机につき、ライトニングはその反対側の椅子に座って候補生たちと向かい合う。特にライトニングの正面には廉造が座った。
「君がイルミナティへのスパイに成功した志摩廉造君だね?フェレス卿も君もお手柄だ」
「はぁ…」
廉造はさすがに四大騎士を前にして緊張しているようだった。
「騎士團はずっとイルミナティ内部の情報を欲しがっていたからね。だけどフェレス卿が上層部で信用がなくて…」
「実に遺憾です」
「そこで志摩君が信用できるかどうか僕が見極めに来たんだよ」
「信用…」
途端に全員微妙な顔になる。ついさっきまで制裁を下していたのだ、当然である。廉造は焦っていた。
「あの、もし信用できんてなったら志摩さんはどうなるんですか…?」
子猫丸の質問に、ライトニングは読めない目で頬笑む。この顔は苦手だな、と思った。
「拷問することになるね。だけどそれはなるべくしたくない。君たちに来てもらったのも、なるべく多角的に検証するためだしね」
拷問、と聞いて衝撃が走る。「拷問」「なるべくしたくない」「多角的に検証するため」どこまでが本当なのかによって、その意図するところは大きく異なる。廉造は泡を吹きそうになっていた。
「じゃ、まず志摩君に質問!君、どうやって騎士團に戻って来れたの?」
「は、はい、えーっとですね…」