変わらないもの−6
メフィストは挨拶もそこそこに本題に入った。
ここ2ヶ月ほどで世界的な悪魔の増加と活発化が進み、学園内でも下級悪魔が現れ常に警邏隊が警備を行っている。祓魔依頼も急増し、予約キャンセル待ちなのだという。
「そこでヴァチカン本部から早急な祓魔師の増員命令が下りました!まずは祓魔師認定試験を来年年明け早々に繰り上げて行い、抜本的な増員を図ります」
「年明け早々!?あと一月半しかないじゃない!」
繰り上げが思ったよりも早く、出雲が驚いて声を上げる。集会の祓魔師たちも大きくどよめいていた。多くの質問が出ているが、メフィストはまだ答えられないの一点張り。
だが、質の低下についての指摘には答えた。
「それはもっともな意見です。そこで、ヴァチカン本部から強力な助っ人が来てくれています。紹介しましょう、ルーイン…」
しかし言い終わる前に、突然排水溝の蓋が吹き飛んだ。そこから出てきたのは、無数のゴブリンたち。数からしてコロニーという共同体ごと出てきたようだ。さらにざわつく中、悠々とステージに現れる男。
ライトニングだ。
「フールフール」
ライトニングは手を上げて、遥か上の天井から見えている曇天に呼び掛ける。麒麟の中でも氣の王の眷属にあたる一種で、積乱雲内部の雷やプラズマに憑依する悪魔だ。
「厳霊よ、四大を統べし主よ…以下省略」
その瞬間、フールフールが稲妻とともに現れ、すべてのゴブリンたちに落雷して一掃した。
たった数秒の出来事に、集まっていた人々は沈黙する。燃え尽きるゴブリンたちを横目に、メフィストが紹介を改めて続ける。
「えー、改めてご紹介します。四大騎士の一柱、詠唱・召喚儀式の達人(ライトニング)こと、ルーイン・ライトです!」
「――――と、いうわけでこれからは、魔法円・印章術の授業を僕が担当します。よろしくね!」
さっそくその日からライトニングの授業が始まった。話を聞きつけ、普段は他のクラスにいる塾生や正規の祓魔師までもが押し掛け、教室は押しくらまんじゅう状態だ。
真ん中最前列に勝呂、子猫丸、燐、宝、その後ろに廉造、朝祇、出雲、しえみと、かつてないほど固まって座らされている。密着する廉造が太ももを触ってくるのがうっとうしい。
「じゃあさっそく授業を始めよう!」
ざわざわとしていた教室も、ライトニングがひと言そう言ってホワイトボードに何やら書き始めれば静まり返る。○、□、+、△と書かれたそれはゲームのコントローラーのようだと思った。
「これなーんだ!はーいじゃあ、サタンの落胤にして青き炎の使い手、奥村燐君答えて!」
「やめろよ!…えーと、コントローラーのボタン?」
「惜しい!答えは僕が普段使ってる印章です!」
「全然惜しくねぇ!?」
燐と同じ思考回路だったことに朝祇は若干落ち込んだ。これは仕方ないだろうと思う。
「シンプルでしょ?実戦ではスピーディーな対応が求められる。そんなとき、複雑な魔法円や長ったらしい詠唱を簡略化する方法があります。それは何でしょう、一ノ瀬君!」
「えっ…」
それを学びに来たのでは?と思うが、 指されたのは知っているだろ、ということだ。つまり、米国で言われたことを答えればいい。
「…悪魔と仲良くなること、ですか?」
「だいせいか〜い!クリスタルひ〇し君をあげよう!」
「不思議発見かよ」
「はい、つまりは、悪魔と仲良くしよう、もしくは悪魔の権力者とのコネを作ろう、以下省略!ということでした〜」
受講者が激減したのは言うまでもない。