君の神様−4
「見えないから何とも言えないけど、ちゃんとした組織なのは分かったわ。でも、聞いてる限りじゃ、とても安全な仕事とは思えないのだけど」
「…命の危険がないとは、言えまへん」
京都や島根で死線を潜り抜けて来たのだ、実際危険な目に遇った。
「…朝祇。あなたなぜ、祓魔師になりたいの?」
そして、ついに真由美はこちらを真っ直ぐに見て聞いてきた。 今、すべてを話すときだ。
廉造、八百造に目配せすれば、志摩家の両親が後ろにずれ、机の真由美の正面側に廉造と移動する。緊張で手汗がすごい。
「…順を追って、話すね」
これは長い話だ。朝祇はなるべく分かりやすくなるように、焦らずに話すことにした。まずは、1年前の春からだ。
「…実は俺、京都に引っ越して来てからすぐに、いじめ、られてたんだ」
「えっ…そんなこと、一言も言わなかったじゃない」
「ごめんね、心配かけたくなくて。どうせ中3の一年間だけだしって思って」
心配かけまいと黙っていた。真由美は少しショックを受けていたが、それは話の根幹ではないと分かっているのだろう、無言で続きを促した。
「もうこんな街やだな、東京帰りたい、そんなことばっか思ってたら…黄龍っていう、神様クラスの悪魔が夢に出てきてね。力を与える代わりに京都を離れさせろって」
土壌汚染などによって苦しんでいた黄龍は、最初、京都を出るための力を蓄えようと、部分的に朝祇に憑依し、朝祇を介してエネルギーを周囲から吸い取っていた。
「その次の日から、俺の全身に悪魔に憑依された跡として、魔障が現れた。それに気付いたのが、同じクラスの廉造だったんだ」
「俺ら志摩家は、明陀宗の座主血統をお守りするんが役目で、その嫡男たる勝呂竜士様と同い年やった俺は、朝祇に浮かんだ魔障を見て警戒せなあかんかったんです」
勝呂への危険を減らすため、廉造は魔障を浮かべた朝祇を見て警戒し、リスクを回避するため接近してきた。
「最初は坊の危険となる因子を見定めるためやったんですけど、接近してみたら朝祇と普通に仲良うなってしもて。油断も忘れて、坊たちと一緒につるむようになったんです」
「おかげでいじめもなくなって、普通に楽しい生活が送れた。そんなときに、俺は黄龍を通して、とある明陀宗の秘密を知ってしまったんだ」
不浄王に関する秘密を知り、もともと黄龍を祓うことを検討していた志摩家はついでに朝祇の記憶を消すことも打診した。それはほぼ決定事項で、朝祇と廉造がどうにかできるものではないはずだった。
「人間のエゴで苦しむ黄龍を祓いたくなかったし、何より廉造のことを忘れたくなかった。いじめられて一人だった俺に、母さんと話し合って京都を出るか踏ん切りをつけられなかった俺に、勇気をくれたから」
「…朝祇は、家のことに縛られて、何もかも諦めとった俺に、いざとなったら一緒に逃げちゃおう、なんて言うてくれました。葛藤してどんな結論に至っても受け入れてくれるて。それに、俺も救われました。せやから、俺は記憶を消さない方法を推したんです」
「それが、祓魔師になること。祓魔師になってしまえば、秘密を知っていてもいい存在になる。それに、記憶を消したって廉造たちは祓魔師として東京に行くから、俺は結局一人になる。それだったら、てのもあった」
身内になってしまえば秘密は秘密でなくなる。廉造は朝祇に祓魔師になることを提案し、朝祇も廉造に記憶を消したくないと言うつもりだった。