祓魔塾始動−6
似た者同士というか何というか。
競うように競技場内を走る勝呂と燐に、呆れを含む苦笑を禁じ得ない。
巨大な吹き抜けの地下競技場は、出入り口や待機するスペースがある部分を円形の空間の端に僅かに残し、空間の中央が6、7メートルほど下がって競技場を形成していた。端からは鉄製の橋が競技場の中央まで伸び、そこから悪魔を閉じ込める檻がぶら下がり、鎖で繋いだ悪魔を操作するスペースが設けられていた。
「あいつら、ほんと似てるよな」
「せやなぁ、一直線な感じが」
「同族嫌悪いうやつなんやろうか…」
中3からとはいえ一年間見てきて、こうも勝呂が誰かを敵視しているのも初めてみた。廉造と子猫丸もそうなのか、困惑しつつも苦笑している。特に勝呂の一直線なところは、2人はよく知っている。わざわざ東京へ来て塾に通うのも、そんな勝呂の個性によるものだ。
しかし競技場で勝呂と燐が取っ組み合いを始めると、さすがに慌てたのか2人は下へと降りていった。
余談だが、なかなかに急な傾斜の壁をよく滑り降りていくものだ。
「バッカみたい」
「あはは…」
髭ケツアゴが特徴的な教師、椿の注意を受ける2人を見て、おさげの女子が冷めたようにバカにしショートカットの女子が苦笑する。確か、神木出雲と朴朔子だ。
「神木さん、あーゆーの嫌い?」
「…下らないって思うわ」
「い、出雲ちゃんクールだから…」
朝祇が聞いてみると、出雲ははっきりと吐き捨てる。勝呂と仲が良い朝祇にそう言ってしまうことに焦ったのか、朴はフォローを入れた。
「いいね、誤魔化されるより安心するし信用できるよ、はっきり言ってくれる方が。俺、一ノ瀬朝祇っていうんだ、よろしくね」
「知ってるわ、あのピンク頭と女子の人気集めてるんでしょ?私は信頼しないわよ、あんたたちみたいなの」
「そりゃ、信頼と信用は違うから俺だって君のことは信頼はしてないよ。俺も友達作りに来てるわけじゃないからさ、君とは利害が一致したときにスムーズに行動できればそれでいいと思ってる」
出雲はそこでようやく朝祇を見上げた。澄ましていた顔には面白そうな表情が浮かんでいる。
「あらそう、それならよろしく。まぁ、あんたの手を借りる必要なんかないけど」
「そっくりそのままお返ししとくよ」
腹を探り合うような会話に朴はおろおろとしている。少し申し訳ないが、ある程度、出雲とは認識を持っておきたかった。
出雲は恐らく、廉造が監視する対象だ。いざというときのことを考えておいての行動だった。
そこへ勝呂たちが戻ってくる。入れ替わりに出雲としえみが競技場に降りていった。
苛々としている勝呂にちょっかいでもかけようかと思ったが、さすがにやめておく。勝呂の血管が切れてしまう。
おとなしく見てようか、と思った矢先、別のところから声がかかる。
「お前、ずっと気になってたけど、その首もとのやつなんだ?」
なんと、話し掛けてきたのは燐だった。勝呂はチッと舌打ちをして離れていく。どんだけ嫌なんだ。
特に確執がない朝祇は、普通に話すことにした。ちょうど退屈していたこともある。
「これ?なんて言えばいいかな…俺に憑依してる悪魔の印」
シャツをジャージごと捲って腹を出せば、黒や赤、黄色などの曲線やいくつかの漢字が姿を現す。勝呂や廉造と違って鍛えているわけではないため、見てはっきり分かる程度の腹筋しかないのを見せるのは少し恥ずかしい。なんであいつらはあんなに割れているのか。
「うおっ…ひょっとして、それ全身か?つか大丈夫なのかよ」
「全身に広がってるね。特に問題はないよ。仲良いし」
「へ、へぇ…」
腑に落ちていないようだったが、そろそろ廉造がいつまで腹を見せているんだという視線を送ってきているためシャツを戻した。なぜか男子と仲良くする方が廉造の嫉妬ラインが低く設定されているのだ。