転機と決意−7
それから20分ほど歩き、ついに拠点に戻ってこれた。3日間と設定されていたわりに、今晩中に終われたのは大きい。
しかし、すでに拠点には出雲と宝がいた。しっかり化燈籠もある。
「お前らもう戻ってたんか!?」
「そんなの使い魔にやらせたわよ。まぁ、宝の方が早かったけど」
「そんだけ人数いてこの時間かよ!ノロマ野郎どもが!!」
宝は例によってパペットで罵倒してくる。いったい何者なのか。それにしても、これで全員クリアしたことになる。だが、実は少し前に花火の音がしていたため、一人は脱落しているはずなのだ。それなのに全員揃っている。
「あれ、お前ら全員か?さっきの花火は…」
シュラも気付いたようで、首を傾げる。いったい何が、と思った瞬間、空から「ヒュウ〜〜〜!!」という声が落ちてきた。
全員がそちらを向いたその瞬間、何かが地面に勢いよく着地する。土煙が上がり、地面が軽く振動した。
『おいでだな』
(終わったらとは言ってたけど、急すぎだろ…しかも、全員がいるところで)
落ちてきたのは予想通り、地の王アマイモン。連れているのは眷属の悪魔、ベヒモスだ。大きな頭に直接手足がついたゴブリンのような姿をしている。アマイモンはベヒモスを繋ぐ拘束具と鎖を外し、涎を垂らしてこちらを睨むベヒモスを解放した。
「ゴー!ベヒモス!!」
そしてアマイモンの掛け声とともに、ベヒモスは獰猛にこちらへ走ってきた。咄嗟に朝祇はホルダーに手を伸ばすが、その前にシュラが口笛を吹いた。
その瞬間、 拠点を囲むように描かれていた巨大な魔法円が炎に包まれ、そして眩い光を放つ。大きな光の塔となった魔法円は、アマイモンとベヒモスを見えない力で弾き飛ばした。
光が止むと、その姿はない。どこかへ飛ばされたのだろう。
「…絶対障壁、ですか?」
「おー、よく知ってるな一ノ瀬」
シュラは軽い口調で答え、いつの間にか抜刀していた刀を地面に突き立てた。勝呂は聞き慣れない単語にシュラを窺う。
「絶対障壁…?」
「あぁ。魔法円の中にいた者は守られ、それ以外は弾かれる。これでしばらくは大丈夫だろ」
「そんなことより!さっきのはなんなんですか!?」
「これも任務なんですか?」
「いくらなんぼでもハードすぎやしません…?」
なおも飄々とするシュラに対し、出雲や子猫丸、廉造が焦りを口にする。シュラは無言で髪を結ぶ直すと、少し険しい顔になった。
「訓練は終わりだ。これから、アマイモンの襲撃に備える」
***
シュラは驚愕する塾生たちを黙らせるように、それぞれに聖水をぶっかけた。聖水はトリプルC濃度のもので、そうお目にかかれる代物ではない。聖水をかけることで、乾くまでの間、魔障を抑えることができる。
その後、各自で携帯を掛けてみたが全滅。電波塔がやられているのか、緊急連絡先ですら繋がらない状況だった。
(塾生に危害を加えないつもりなんじゃないのか…?それとも、死なせはしない程度なのか…)
『殺すことはないだろうが、怪我は厭わないだろうな。用意周到なところを見るに、ある程度は許容するつもりだろう』
(なんてやつ…はぁ、怪我の軽減に努めるのが目標になるだろうけど、殺す気でいかなきゃ歯が立たないだろうな)
『また戦うつもりか』
(危害が加えられるようならね。でも、どのくらい太刀打ちできるか…)
前回よりもこちらの部が悪い。場所や時間の制約があった前回よりも、人目や被害を気にしなくていい状況だ。アマイモンはより激しく動けるだろう。