いざ米国−9
「よし!順調だね!次行こう!」
契約が成立すると、ライトニングはパン、と手を叩いて促した。聳弧は一瞬そちらに対して目を細めた。警戒している。
朝祇はとりあえずそれは置いておいて、印章紙を出して血をつける。麒麟は朝祇の顔を覗き込んで心配そうな表情をしている。
「主様大丈夫?無理しないでね。多分、次は索冥がいいと思う」
「…大丈夫。ありがとう。そうするよ」
連続で召喚しているため、少し疲労は溜まっている。だが、また大丈夫だ。まずは言われた通り、索冥を召喚することにした。
「白秋が瑞獣、毛蟲が長、冀うを聞くは其の礼徳の大なる故ならずや」
印章紙から飛び出した光は、すぐに大きな白い麒麟が飛び出した。索冥の力を銃に宿したことはあったが、直接呼び出すのは初めてだ。
「…はじめまして、索冥。君と話してみたいから、よければ少し喋らない?」
白く輝く、ヨーロッパのユニコーンにも似た索冥は頷き、すぐに人型をとった。麒麟と聳弧はじっとそれを見ている。
光を纏った変身を終えると、人型の索冥が現れた。白銀の短髪で背格好はやはり麒麟たちと同じ。顔つきはキリッとした男前だ。何となく武士っぽい。
「…お初にお目にかかる、主様」
低い声は顔に似合うもので、やはり格好いい。
「ありがとう、人型を取ってくれて……」
「…いかがされた?」
思わず無言になってしまった朝祇に、索冥は少し首を傾げた。ライトニングも何か分かっていないのか不思議そうにしているが、麒麟と聳弧は何となく分かったようだった。
「…索冥、お前、かっっっっこいいな!!すげぇ俺の理想の男だわ!!」
「…、…、」
寡黙な武士のような男前。朝祇はわりとそんな姿にとても憧れる。やはり日本男児だからか、そのようなクールなかっこよさが眩しい。とても魅力的だ。
そんな朝祇に、索冥は困惑して麒麟たちを見た。助けを求めるようなそれに、麒麟と聳弧は噴き出した。ライトニングも再び腹を抱えて岩の上で笑い始める。
「索冥が困った顔してるー!めっちゃ面白い!」
「ははは、主様さすがだなぁ!」
「えっ、なんか変なこと言った?」
朝祇はなぜ彼らが笑っているのか分からない。また当たり前でないことを言ってしまったのだろうか。索冥も困ったようにしていたが、やがて肩の力を抜いて微笑む。
「…なるほど、麒麟たちが従ったのはそういうことか」
「面白いっしょ!索冥も契約しちゃいなよ〜!」
「ちょ、聳弧!索冥になんてことを」
「いや態度!俺と違いすぎでしょ!!」
笑う聳弧に焦る朝祇だったが、つい索冥を上げることを言えばさらに聳弧は笑った。索冥も苦笑し、朝祇の肩に手を置く。
「構わない、主様。その二人が従ったんだ、それだけで信頼するのに十分だ」
「…やっぱ格好いいな」
ふっ、と笑う索冥が男前過ぎて、もはや呆然とする。ライトニングは息も絶え絶えだった。笑い上戸なのだろうか。
「ありがたく思っておこう。…白秋が索冥、あなたの使役を拝することを誓おう」
「…よろしく」
あまり仲良くなれた自覚はないのだが、索冥は麒麟たちが従っただけで十分だと判断してくれたらしい。男前すぎやしないか。
麒麟、聳弧、索冥はいずれも地の王の眷属であるため、黄龍を宿すことや一人でも従えられたことなどにより、簡単に従えることができた。まだ楽ではある。
問題は、残る2体だ。
しかし、そろそろ朝祇の体力も限界である。
それを察した麒麟と聳弧と索冥は、ひとつ頷いてこちらに向き直る。
「じゃあ俺たちは帰るね〜!また何かあったら呼んで!」
「いつでもお待ちしている」
「無理はしないでね」
口々に言うと、朝祇が「ありがとう」と頷くのを待って、彼らは虚無界に帰っていった。
「お見事!じゃあ今日はここまでにして、次は明日やろう」
「はい、よろしくお願いします」
さすがに疲れてしまった。ライトニングは、恐らく有事の際に対応するために控えていてくれているのだろうから、少し忍びない。
「ライトニングさん、ありがとうございます」
「いいっていいって!面白いものが見れたしね」
そう言うライトニングだったが、朝祇は面白いで話が終わるのはここまでだろうな、と薄々勘づいていた。