いざ米国−12
4日目。
もう見慣れてしまった砂漠の真ん中、ライトニングはいつもの岩に腰掛けて伸びをする。
「んん〜…で、今日はどんな作戦で行くんだい?」
「麒麟たちから、喧嘩っ早くて単純なやつだと聞いてるんで、会話を誘導してみんなに戦ってもらいます」
「了解。じゃあその間に銃の練習しようか」
「はい」
それにしても、案外ライトニングはしっかり見てくれている。昨日だって、角端と戦っている間はいつでも加勢できるよう気を張っていたのが分かった。暇ではないだろうに、こうして付き合ってくれている。
「…どうかした?」
「あぁ、いえ…なんか、意外とちゃんと見てくれるんだなぁって…」
「はは、そうだねぇ、普通の子なら適当に理由つけてサボったかなぁ。君の場合は、敵に君を持ってかれたら正十字騎士團として重大な損失になること、とても優秀なこと、あと可愛いことが理由で、ちゃんとやろうって思ってるよ〜」
「…最後の余計です」
「そういうとこが可愛いんだけどね」
どうせアメリカ人からしたら幼いですよ、なんて少しずれたことを思いながら、朝祇はまず印章紙を取り出す。 血をつけて、早速呼び出す。
「朱夏が瑞獣、毛蟲が長、冀うを聞くは其の礼徳の大なる故ならずや」
印章紙から飛び出した光は、朝祇の正面で形を成して、大きな鹿の姿になった。鬣は赤々と燃え、深紅の毛並みが美しい。
南を司る炎駒だ。
「こんにちは、炎駒。よければ君と仲良くなりたいんだけどさ…」
『ハッ、誰が貧相なガキと仲良くなんざするか!』
「じゃあ、君に勝てば認めてくれる?」
『俺を誰だと思ってる?朱夏が烈火を司る炎駒様だぞ!お前のような乳臭いガキが勝てるか!』
うぜえ、と思わず言わなかったのを褒めてほしい。朝祇は自制心自制心、と唱え、作戦を実行する。
「や、やっぱりそんな炎駒に戦いを挑むなんて…いや、でも…」
『ふん、怖じ気づいたか?まぁ、俺の覇気を前にすればそうなるよなぁ』
「…そんな強い炎駒と俺ひとりで戦うなんて、ゾウにミジンコが喧嘩売るようなもんだ…」
『そうだろうなぁ。どうしても俺と戦いたいって言うんなら、しょうもない人間のためにハンデつけてやってもいいんだぜ?』
「ハンデ…!?敵に塩を送るその余裕…さすが炎駒…」
『あぁそうとも!いくらでもハンデつけてやるよ!』
「…言ったな?」
チョロい。
朝祇は実に簡単に誘導できたことにニヤリとせずにいられなかった。突然しおらしい態度を一転させた朝祇に、炎駒は訝しげにした。
「言質は取ったからな。…黄土、青春、白秋、玄冬が瑞獣、毛蟲が長、冀うを聞くは其の礼徳の大なる故ならずや」
朝祇が唱えると、その周りの地面に4つの五芒星が浮かび上がり、そこから麒麟、聳弧、索冥、角端が現れる。4体の登場に、炎駒は思わずといった感じで後ずさった。
「4体の麒麟を従える少年…いやぁ、圧巻だねぇ」
ライトニングはいつもの食えない笑みで感心したように言った。確かに、何かの宗教画のような光景である。
『お、おい、聞いてねえぞ!』
「いくらでもハンデつけてくれんだろ?」
『言葉には気を付けろって僕は何度も忠告したのに』
麒麟は呆れている。炎駒のこういったところは筋金入りのようだ。
『御託はいりません。さっさと済ませないと主様に負担がかかります』
『角端も昨日の今日なのにね〜?』
『俺たちも一昨日のことだろう…』
角端、聳弧、索冥と続くが、こうして見るとそれぞれの個性が強いことが分かる。
「じゃあみんな、頼むね。あ、なんかいる?髪とか」
『今回は4対1だからいいよ』
そう言った麒麟の毛並みを撫でてから、朝祇は下がる。
それが合図となって、4体は炎駒へと向かった。聞こえてきた悲鳴は炎駒のものだろう。
その間に朝祇はライトニングのところへ向かった。
「いやぁ、はは、すごい光景だねぇ」
「…なんかの映画みたくなってますね」
「じゃあその間にやっちゃおうか」
立ち上がったライトニングは、大混戦となっている麒麟たちの方を向く。度々空に向けて炎や水や植物の柱が立ち上がり、ライトニングの張った結界に当たって火花が散る。何度も彼らの攻撃に当たってもびくともしないのは さすがと言わざるを得ない。
「使ってるのは…グロック18Cかな?」
「はい、そうです」
「女性でも扱えるからね、君みたいに細い人にはぴったしだ」
「……そうですね………」
けらけらと笑うライトニングに米神がひくつくのを感じた。言葉を選ばないのか、あえてむかつく言葉を選んでるのか分からない。