眩い強さ−4
「燐、これ続きは……?」
「ねーよ、次来月だし」
「来月!?」
「あれ、言ってなかったっけ?それ月刊誌だから」
それからというもの、2人はよくともに行動するようになった。互いに友達なるものがどういうことかあまりよくわかっていなかったため、探り探りである。昼食を一緒にとるとか、たまに互いの寮に行くとかだ。
あとは、名前で呼び合うことにした。これは千秋の提案だ。「友達っぽくない?」「お前天才か」なんてやり取りで決まったことである。
今日も昼食を教室で食べながら、先日燐に借りたマンガの続きを催促した。しかし月刊誌と聞いて、絶望的な気持ちになる。
「あと1ヶ月も待つの……」
「いやぁ、明日には気にならなくなるって。んで、忘れた頃に発刊日が来る感じだなー」
「無理…耐えらんない……」
「ほら、これでも食えって」
そんな千秋に、燐が箸で卵焼きを掴んで差し出してくる。弁当を自分で作ってきているというのだから驚きだ。
箸に直接かぶりついて卵焼きを食べる。相変わらずの美味しさだ。
「お前な……」
「うっま!…えっ、なに?」
「…なんでもねー」
燐は少し顔を赤らめていたが、言葉を濁すので追及はしなかった。
すると、そこへ声がかけられる。
「なにイチャついてはるん奥村君」
「あ、志摩じゃん、つかイチャついてねー!」
見上げると、ピンク色の髪をしたタレ目の男子が立っていた。確か、C組のチャラい奴で有名な志摩廉造だ。
「そーなん?まぁええけど、次の古文の教科書忘れてもーてん、貸してくれへん?」
「ん、」
「おーきに!」
教科書を燐に借りた廉造は朗らかに笑って去っていく。去り際に顔見知りの女子とキャッキャッするのも忘れない。
「……何繋がり?」
なんだか燐と知り合いにしては、随分とキャラが違う。不思議に思って聞いてみると、燐は何でもないように答える。
「同じ塾のやつ」
「……塾?」
またも燐からはイメージのない単語が出てきて聞き返す。
「あぁ、俺祓魔師になりたくてさ。その塾通ってんだ」
「えっ、そうなの?ほんとにそんなもんあるんだ…」
驚きの連続である。公益法人ながら公権力を行使する謎の団体である正十字騎士團、その祓魔師になるための塾がこの学園にあるとは噂では聞いていた。
「悪魔ってほんとにいんの?」
「……いるぜ!」
一瞬顔を強張らせたあと、燐は笑って言った。その変化は気になったが、謎の多い祓魔師という組織だ、言えないこともあるだろうと深入りはしなかった。
―――いや、深入りするなと言われるのが、怖いだけかもしれない。
そんな自分に内心辟易とするが、気を取り直して別の質問に切り替える。
「同じ塾なら友達じゃないの?」
「どーだろ、よくわかんね。でも、自信持って友達だって言えんのお前だけだわ」
答えはそんな煮え切らないものだったが、千秋だけ、と言われてちょっと照れる。基本的に燐はストレートなので、こちらが大変だった。
「そ、そうなんだ…」
「お前は?部活のやつは友達じゃ……あっ、いや、悪い」
燐は逆に聞き返してきたのだが、言いながら失言だと思ったのだろう、謝って黙ってしまった。
結局、いじめのことは燐に話した。部内で妬みからいじめを受けていることを話せば千秋よりも怒ってくれて、何かあれば言うように繰り返し言われた。
今はあの転んだときに重度の捻挫をしてしまったため、部活は休んでいる。だからいじめにも遇っていなかった。
「謝んなくていいって」
「ほんと、何かあれば言えよ」
「分かってる。あっ、次の日曜は雑用だけど、合同練習参加するよ」
付近の高校と合同で練習する機会があった。まだ競技には出れないが、記録くらいはする。
「気を付けろよ」
「ん」
なおも心配そうにしてくれる燐は、やはり優しいな、とぼんやり思った。