Rock you !−2
山に入ると、騒いでいた金造も一転して仕事モードになった。と思ったら、千秋の横で「好きな食べ物なんすか!」とか 「あのストロークどないなっとるんですか!」とか、とにかく質問攻めにされた。他の祓魔師も一応諌めるのだが、それには力がない。
大方、全員明陀宗なのだろう。志摩といえばその僧正筆頭、立場的に強く出れないのだ。
面倒だな、と内心は辟易とするが、芸能人でありながらこうしたことをやる以上、ぞんざいにすれば「お高く止まりやがって」と噂されるに違いない。それではチームワークを機能させられない。
「あのドームツアーの福岡のやつ、めっちゃかっこ良かったっす!マジパネェって思うとりました!!」
「ありがと、」
しかも金造は押しが強い。ぐいぐい来る。普通はもっと遠慮するだろうに、まったくなかった。
しかし、あれ、と千秋は疑問に思う。先程から金造は、千秋個人のことが少しと、あとはバンドでのことしか聞いてこない。モデルや俳優の仕事の話も普通出る、というかこのような場面ではむしろそちらの話でもちきりになる。
そういうのには敏感そうな今風の子なのに、と思うと、そこで現場に到着する。
ようやく金造も真剣な面持ちになって錫杖を構えた。
「ここです。あの森から…あっ、来ました!」
開けた空き地にて、反対側の森からわっと鳥が夜空に舞い上がる。数が多い。不気味な泣き声を発しながら、鳥の悪魔たちはこちらへと襲い掛かってきた。
「主は天から雷をとどろかせ、いと高き者は声を出された」
十字架を掲げて詠唱しながら、千秋は鳥たちに向けて銃を発砲する。銃弾が5匹の鳥に当たったその途端、空から雷がどこからともなく落ち、轟音を響かせた。
千秋の称号は詠唱騎士と竜騎士であり、相互に補助しあいながらそれぞれの戦い方を生かしている。
「千秋さんすっげぇ!」
「いいから戦え」
「うっす!!」
感嘆の声を上げる金造に一言だけ返し、千秋は戦闘を継続する。他の祓魔師たちも真言を唱え、金造は錫杖を真言でコントロールしながら空に投げる。
しかしそれでもあっという間に悪魔がこちらの真上までやって来て、とても追い付かない。自然とそれぞれ分散していき、千秋と金造は空き地の端まで追い立てられていた。
空を飛ぶタイプなのもあり、千秋は雷をもう一度落とすが、その瞬間に視界が眩んだ。万全の体調でないのに、詠唱に頼りすぎたのだ。
まずい、と思って立て直そうと足を後ろに置いた、そのとき。
そこに地面はなく、体ががくりと傾いた。
「しまったッ、!!」
斜面だ。木々の高さが変わらず気付いていなかったが、ここは斜面に面していたらしい。掴まるものはない。
「千秋さん!!」
そして、慌てて走ってきた金造に抱き締められた。
その直後、柔らかいものに包まれたまま千秋はなすすべもなく急勾配を滑落していった。
***
気が付くと、真っ暗な冷たい土の上にいた。体の痛みはあまりない。起き上がると、温かく柔らかいものを下敷きにしていた。それを見て、さっと血の気が引く。
「っ、金造君!?」
「うっ…良かった、千秋さん、無事やったんか…」
「バカ、お前…っ!!」
どうやら千秋を庇ったらしい。金造はあちこち切傷だらけで呻いている。さっと見渡して致命傷はなかった。
斜面の上は暗闇で見えず、かなり落ちてきたのだろうことは分かる。
「俺、頑丈なんでへーきっすよ…」
「そういう問題じゃない!待ってろ、今手当してやる…」
千秋は急いで応急措置を始めた。医工騎士の称号も持っていて良かった。なんとか手持ちの装備だけで 手当できそうだ。
頑丈だというのは本当だったようで、軽い打撲と切傷だけだった。
「…よし、これで大丈夫」
「おーきに!」
「うん…それにしても、どうするかな」
登ることや降りることができそうな山ではない。助けが必要だ。ちょうど電話が鳴り出てみれば、同行していた祓魔師だった。
『大丈夫ですか!』
「俺も金造も大丈夫です。そっちは?」
『祓魔は終わりました。今から助け呼ぶさかい、照明弾か何かお願いします。40分くらい待っとってください』
「了解」