Stoic Love−3
翌日からさっそく、2人で行動を共にするようになった。まず気付いたのは、やはり友人たち。
「千秋〜、昼飯いこ〜」
「悪い、今日は勝呂と約束してるから」
「へ、勝呂君?」
「そっ」
深追いされると面倒なので、それを匂わせながら「じゃあ、」と手を振って離れる。これで皆、しばらくは追究しないでくれるだろう。大学の友人関係のこういう雰囲気は好きだ。
そして勝呂と合流し、ラウンジへ向かう。
「ほい、例のブツ」
「おおきに」
「…なんか、関西弁だとほんとに ヤーさんの会話みたい」
「あぁ、神戸弁やったらそれっぽいで」
「マジなやつじゃん」
くすくすと笑いながら包みを開ける。勝呂と2人分、弁当を作ってきたのだ。普段から千秋は弁当を作ってくるため、どうせ一緒ならと勝呂の分も作ってきていた。ストーカー対策なんて、昨日まともに話すようになったヤツ相手にするようなことじゃない。それを進んで手伝ってくれる勝呂への、せめてもの感謝だ。
「…美味い」
「あ、ほんと?良かった」
「ホンマに冷凍やないんか」
「高いじゃん、そんなん使ってらんないよ」
お高い冷凍は使わず、すべて手作りだ。料理はわりと得意なので、苦ではない。精悍な顔を緩めて箸を進めているのが見えて、作った甲斐があった。そしてふと思ったことがあったので、口に出してみる。
「勝呂ってさ、家庭的な子好きそう」
「…なんやいきなり」
「どーなの?」
「んなこと考えたことあらへんわ」
「仮の仲とはいえ俺が家庭的で良かったな、ダーリン」
「やかましいわハニー」
やかましいと言いながらノってくれた勝呂に、また笑いが漏れる。勝呂もクツクツと笑っていた。
***
存外、勝呂と一緒にいる時間は楽しい。お互い勉強しているため、様々な話ができたし、今まで友人と話したことのない固い話もした。結構ノリもいいし、よく笑う。
顰め面なのは真顔だと言っていたため、「生まれてきたときも?」と言ったらデコピンを食らった。
しかし、楽しい時間ばかりではなかった。
いつも通り、帰りがけに勝呂も千秋の家に寄ったときだった。
また、あの茶封筒が入っていたのだ。思わず廊下に立ち止まると、勝呂がそれを抜き取る。
「証拠になるさかい、残すで」
「…うん」
それに、中身を見れば犯人を特定する手掛かりになるかもしれない。とりあえず中に入ると、2人でベッドに座り、ローテーブルの上で封筒を開けることにした。さすがに勝呂にやらせるわけにはいかず、千秋は反対を押しきって自分で開けた。
ゆっくり封筒を傾けた、そのとき。
どろりと中から白い液体が垂れ、千秋の右手についた。
「ひっ、!?」
「チッ、はよ手ェ拭け!」
勝呂は素早くティッシュを掴み、千秋の手を拭いてくれる。封筒からは何枚か写真が散らばり、そしてコンドームも垂れ下がる。勝呂はテーブルに落ちる前にそれを封筒に戻し、ビニール袋に茶封筒ごとしまった。
「洗ってこい」
「うん、ありがと」
素早い勝呂の対応のおかげで、汚れたのは手だけだった。洗面台で入念に洗ってから戻ると、勝呂は険しい顔で写真を眺める。
それを隣に座って覗きこんだ千秋は息を飲む。
それは、2人が並んで歩いている写真で、勝呂の顔に赤く×が書かれたものだった。他のものには、ご丁寧に「コロス」とまで書かれている。
「…勝呂、やっぱり、」
「やかまし。何言おうとしとるかくらい分かっとる。どうせここまで来たら変わらん」
「っ、でも、」
「うるさい!俺が守る言うてるやろがィ!!」
勝呂はそう怒鳴ると、千秋を抱き締めた。逞しい体に抱き込まれ、驚いて固まる。
「…勝呂、」
「…すまん、怒鳴ってもうて。せやけど、お前のことを別にボランティアみたく守りたいわけやない。…守りたいて思うとるからそうしとるんや」
包み込まれる温もりも、耳元の低い声も、清潔な石鹸の匂いも。すべて、見えない恐怖から守ってくれる安心感があった。
ありがとう、短く返すと、より強く抱き締められた。