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少しそんなことはあったが、無事に雪男が処理し、一同は次の目的地に向かうことにした。朝祇も気を取り直している。そもそも少し触られたくらいだ、あまり気にしていない。

バスを主に使い、金閣寺や清水寺、二年坂など東山の名所を巡る。しえみはひたすら抹茶や漬物などを食べていた。

日も傾きかけて来た頃、再び京都駅に戻ってくると、いよいよ燐がご所望していた京都タワーに入る。廉造たちも初めてとのことだ。
エレベーターで展望台に上がると、思いのほか高い景色が広がっていた。高層ビルがないこともあって、市街地が一望できた。


「意外と高いな」

「せやなぁ、自分の生れた街を空から見るいうんもええなぁ」


廉造と2人で窓に寄ると、初めての景色はそれなりに面白かった。後ろから勝呂と子猫丸もやって来て、出張所や旅館、母校の中学校などを探した。


「あっ、あそこ金剛深山だ」


その中で、不浄王と戦った山の一部が見えて指差すと、肩が軽く廉造に当たった。廉造は気にせずに「ホンマや」と返している。心なしか温もりが近い。
やはりさっきのことがあったからか、無意識に廉造の側に寄ってしまっていた。それは廉造も同じようで、さっきから何度か、清水寺の舞台や金閣寺の 池のほとりでも、肩がぶつかり合った。

その近さに、勝呂は少し呆れたようにしながらも放っておいてくれていた。廉造は気付いていないようだ。


やがて散らばっていた面々が何となく合流し、燐がお土産屋でストラップを買うと、そろそろ帰る空気になる。京都タワーを出たら、あとは旅館に帰るだけだ。

すると、先頭を歩いていた燐が立ち止まる。


「みんな…あ、あのさ、頼みがあるんだ」


それに気付いて後ろの朝祇たちも止まり、燐を注視する。


「俺、こんなやつだけど、これから皆と…ここで一緒に撮ってもらってもいーかな!?」


そこは、京都タワー展望記念というパネル。撮影スポットだ。燐が期待したようにこちらを振り返る。


「チッ、断ってサタンの息子に燃やされたら敵わんしなぁ!」

「サタンの息子の命令なら仕方ないわね…」

「そないな遠慮がちに言われても脅迫にしか聞かれへん」

「サタンの息子さんの仰せのままに…」

「まだそのネタ引っ張ってんの!?」


勝呂たちと意外にも出雲もノって、回りくどく了承を伝える。「イジメ!?」と突っ込む燐に、廉造がケラケラと笑った。


「いやむしろそこ生かさんとー!せっかくのキャラがもったいないやん!」

「そうそう、俺なんて行きの新幹線からやってたもんね」


朝祇は京都行きの新幹線ですでにこのネタを使っていた。肩に寄り掛かって寝てやったときだ。
勝呂も笑って、燐の背中をぽん、と叩いた。


「つーか"そこ"、いちいち許可取らんでもええわ!」


そんな当たり前のことでも、燐にとっては新鮮だったらしい。もう、このメンバーで他人行儀はいらないのだ。

燐は頷くと、撮影を頼むためスタッフのところへ走った。

その隙に、廉造が悪戯っぽく笑う。


「なあなあ、奥村君の後でこっそりSATANの人文字やらん?」

「またしょーもな…でもえーんやないか?この際徹底的にイジったれ!」


勝呂もニヤリとして賛同した。
数としては廉造、勝呂、朝祇、子猫丸、出雲で足りる。


「あ、でも勝呂が子猫丸をおんぶして2人でTのがよくない?」

「せやな、その方が分かりやすい」

「…まぁ、それなら仕方ないですけど」


子猫丸は少し不貞腐れたようにするも、頷いた。すると一人足りない。


「あと一人…今日の奥村せんせ少し話しかけづらいし…」


廉造はどこかピリピリとした雪男を避けようとしたが、聞こえていたらしい雪男は満面の笑顔になった。


「いいですよ!僕やります、ぜひやらせてください!」

「えー怖いくらい爽やかな快諾!」


いったい燐は何をしたのか。雪男の笑みが復讐を物語っていた。こうして人員は揃い、燐が女性スタッフを連れてくると、素早く人文字組は後ろに並んだ。

左から順に、朝祇、出雲、勝呂と子猫丸、廉造、雪男でSATANを描く。
その前にしえみ、燐、宝もしゃがんだ。


「はい、撮りますよー」

「よっしゃ皆いくで!」


ヒソヒソと廉造が号令をかけ、各々了解し、それぞれ文字をつくる。どんな反応をするだろう、と思うと笑えてきて、さらに隣の雪男以外の面々が笑いを堪えて震えるものだから、朝祇もおかしくて肩が震えた。


「はい、チーズ!」

「っておい!まさかSATAN!?」


そんな燐の声が、京都タワーに響いた。


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