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「あいつ、朝祇君のこと好きやって自覚させたとき、俺と金造にマジモンの殺気向けよったんやで」


中3のとき、廉造に自身の気持ちに気付かせようと、柔造と金造で煽ったらしい。そのときに、廉造は思いきり2人に殺気を向けたのだそうだ。そんなこと初めて聞いた。


「廉造はあないな無関心な感じが標準装備やけど、朝祇君のこととなるとすーぐ熱なるで」


昼間に元同級生を殺そうとしていたように、廉造は朝祇のこととなると火がつきやすいらしい。それくらいには好きでいてくれているのだと改めて分かり、照れ臭い。


「実は…今日、ばったり俺のこといじめてた奴に出会しまして。しかも襲われかけたんですよ」

「えっ、あの事件のときのやろ?大丈夫やったんかいな」

「はい。そしたら廉造がぶちキレて、殺してやるって言って聞かなかったんです。物騒だけど、でも、ちょっと嬉しかったですね」

「あんときも殺したる言うてたなぁ」

「…だからほんとは、今日は、側にいて欲しかったなー、なんて、思ってたりしたんです。内緒ですよ」

「……、まったく」


呆れたように柔造はタメ息をつく。
ちょうどそこへ開演を知らせる照明の暗転もあったものだから気付かなかった。
実はこのとき、朝祇が言ったことを柔造が廉造にメールしていたことも、内緒にするよう言ったことへの返事はなかったことも。
もう少し言えば、始まったライブにすべて持っていかれた。







「ピイ"イ"イ"イ"スエ"ン"ン"ッッヴァイヤア"ア"ア"ア"ア"!!」


いつもの法衣の袖を捲し上げ、三味線を抱え、オールバックにした金造。
その喉からは、信じられない声量と音圧のデスヴォイスが響き渡った。


「入滅ストライダア"ア"ア"だゴルァッッ!!!」


そして三味線が掻き鳴らされる。柔造や八百造が言っていた通り、その腕前は確からしく、相当テクニカルな動きをしている。
だがそのデスヴォイスと、観客たちの激しいノリについていけない。


「金造さんかっけええ!!」

「いてこましたれェアア!!」


合間に金造の「心頭滅却!!」「火もまた涼し!!」となんだかよくわからない歌詞が聞こえてくる。

なんだそのノリ、と恐ろしくてノれなかった。意外にもしえみや出雲はノリノリで、廉造がそれに引いてそっと退出していた。そのあとをついていこうとすると、柔造がぽん、と朝祇の肩を叩いて頷いた。任せた、ということだろう。頷き返し、爆音の響くハコを後にする。

扉を開けると、道路に廉造がしゃがみこんでいた。


「俺あっついの苦手やねん…て朝祇っ、」


出てきた朝祇に気付き、廉造が慌てて立ち上がる。何か弁明しようとしていたが、何か言う前にその口もとにひとさし指を添えてやった。


「俺のこと好き過ぎて実の兄貴に殺意向けちゃうくらいだし?気にしてないよ」

「へ……ってあのときのことかいな!柔兄言いよったな!!」


指をどかせば廉造は少し顔を赤くして恥ずかしそうに憤慨する。だが、観念したようにタメ息をついた。


「あーそうです、朝祇のことになると暑苦しいて思うことでも簡単にやってまう俺ですー」


拗ねたように言う廉造に、思わずくすくすと笑ってしまう。やはり嬉しい。その気持ちのまま、廉造に抱き着いた。


「はは、俺も熱いのは苦手。でも、あったかいのは好き。こういうね」


密着する廉造の温もりが愛おしい。これくらいの温度が、ちょうどいい。


「…帰ろか」

「そだね」


体を離して、夜道を2人並んで歩き出す。
ふと廉造がスマホを確認し、柔造のメールを見て突然叫び、謝り倒して朝祇を帰ってからメチャクチャに甘やかすことになる直前のことだった。


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