エイプリルフール


●完結後
エイプリルフールネタ



廉造も朝祇も、悪戯には全力投球するタイプだ。やるからには徹底的に。労力も惜しまない。
そんな朝祇が、エイプリルフールなどというイベントを、見逃すはずもなかった。



***



4月1日の朝、学校へと向かう道すがらにはすでに本格的に始まっていた。


「あー…頭いてぇ…」

「まだ具合悪いん?」


いつも通り、4人で寮から校舎へと向かっているのだが、朝祇は米神に手を当てて眉を寄せていた。頭痛のフリだ。
昨晩、体がだるくて調子が良くないというのを漏らしていたため、それがまだ治っていないのだとアピールしているのだ。

実際にはまったく具合など悪くない。それに、きちんと日付が変わってから口にした。


「やっぱ休んだ方がええんとちゃうかな」

「せやで、寝とれ」


子猫丸と勝呂も心配そうにしてくれる。それには、朝祇は笑顔を 向けた。


「いや、そこまでじゃないって。ちょっとダルいだけだし」

「何かあったら俺が運んだるからな」


廉造はそっと肩を抱いてくれる。なんだかんだ紳士的なところがあるのは、少しドキっとしてしまう。


「あー、やっぱ一昨日の任務で変な体液浴びたからかな」

「えっ、そないなことあったん?」

「そうそう」


一昨日、出雲と任務に出たのは本当だ。だが、悪魔の体液を浴びたのは嘘だ。しかし確かめようもないし、ちゃんと決まり通り午前中しか嘘をつかないため、午後の塾までにはバレないで済む。


「それが原因やろ」

「一ノ瀬君が珍しなぁ」


勝呂は顔をしかめ、子猫丸はなおも心配げにしている。ちょっと罪悪感を感じないでもなかった。



それから学校に着くと、退屈な授業を受ける。そして3時間目の終わったあと、これまたいつも通り、男子組が廊下に集まった。燐も加えて5人になると、具合の悪いフリをする朝祇に燐が心配し、子猫丸が説明した。

いよいよだ。


「あの、さ…」


子猫丸の説明が終わったところで、朝祇は切り出す。4人の視線がこちらに向くのを感じながら、俯いて口を開く。


「………妊娠した、らしいんだよね」

「……………誰が?」

「………俺が」


たっぷりと間を開けてから、廉造が恐る恐る確認する。それにゆっくりと答えた。


「黄龍が教えてくれた。…この前の任務で浴びた体液にそういう作用があって、そのあと、その、廉造とな、うん」


あえて言い淀むと、痛いほどの沈黙が降りた。さすがに勝呂あたりはエイプリルフールと気付くだろうし、廉造もイベントには熱心なのだから分かるはずだ。だから、ここでネタばらしの予定だった。


「え、えええ!?どーすんだ一ノ瀬!!」


すると、アホの子である燐が驚愕の叫びを上げた。まさか本当に騙されるとは。


「アホか奥村!」


現に、勝呂は呆れたように燐をどつく。さぁエイプリルフールだ、と思った瞬間。


「赤飯炊いてトイ〇らスに決まっとるやろ!!」

「……え」


なんと、勝呂は真面目な顔でそう言った。下らないとこの手のイベントなど一蹴してしまう勝呂が、乗っかるわけもない。


「坊、何言うてはるんですか…」


それに対して、子猫丸は冷静に嗜める。さすがに子猫丸は大丈夫なはず。


「先に西〇屋ですやろ」

「えっ…」


全然ダメだった。問題はそこではないだろう。朝祇は予想だにしない展開に顔が引き攣った。

そして、終始廉造は無言。呆けたように茫然自失としている。どうしよう、と思ったところに、チャイムが鳴ってしまった。




そして昼休み。中庭に出ていつものように昼食を取ろうというときに、落ち着いたらしい勝呂が問い質そうとする前に「ごめん!」と謝った。


「エイプリルフールだから!具合悪いのも妊娠したのも嘘だから!」


確かに信憑性を高めるために具合が悪いフリをしたが、まさかここまで全員引っ掛かるとは思わなかったのだ。
勝呂と子猫丸は授業中に冷静になって可能性に思い当たっていたのか、呆れてタメ息をついていた。
燐は本気にしていたらしく、憤慨しつつも「凝ってんな!」と最後は笑い飛ばした。

しかし廉造は、エイプリルフールと聞いて目をパチパチとさせたあと、おもむろにニッコリと微笑んだ。


「いやぁ、今後の人生設計立て直さなアカンて思うとったさかい、嘘なら良かったわ。せやけど、嬉しかったんやで?気持ち的には」

「うっ…すぐバレると思って…」

「それに、『廉造嫌い』言うてホンマは好きみたいなんやってくれるて思うとったけど、具合悪い言うさかいできひんかったなぁ」

「だからごめんて…」

「こーなったら、ホンマに孕むまでヤるしかあらへんなぁ」

「……へっ、」


廉造の笑みは深まるばかりだが、その目の色は本気だ。本能的にヤバい、と感じて逃げの姿勢を取るも、廉造ががっしりと朝祇の腕を掴み、耳もとで低く囁く。


「今晩、覚悟せぇよ」


終わった。
蒼白になっているだろう朝祇に、「助けへんで」と勝呂の無情な追い討ちがかけられた。


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