遊園地
●完結後
遊園地デート
そろそろ寒さも厳しくなろうとしてきた頃、廉造と朝祇は人で賑わう遊園地に来ていた。学園町の下層にあるメッフィーランドである。
日曜日だけあって人手が多く騒がしいが、2人もそれが気にならない程度にはテンションが上がっていた。
***
廉造におもむろに遊園地へ誘われたのは、つい先週のことだった。寮生活で塾に通う2人の予定が合わないはずもなく、そんな直前でも問題なかった。
服装は事前に決めた通り、制服姿である。寒いのでマフラーをしているが、それも学園指定のものだ。強いて言うなら、朝祇はいつもの白いカーディガン、廉造は黒いセーターである。制服で遊園地というベタなことが好きな廉造の要望通りだった。
ここへ朝祇が来るのは学園祭以来である。廉造がイルミナティについていった、あの後夜祭の夜だ。
2人で来たいと思ったのは、この遊園地でゴーストの任務をしたとき。
「いやぁ、ホンマまた来れるとはなぁ」
「そだね」
あの任務で、朝祇は燐とともにアマイモンと戦い、遊園地は半壊した。その後10月に復旧したのだが、後夜祭での熾天使の自爆攻撃によって損傷し、また半月ほど休業していた。
ともすればあのときのことを思い出してしまいそうになるため、朝祇は話題がこのまま進むのを避けることにした。
「とりあえず何乗る?」
「せやなぁ、結構混んどるし、午前はジェットコースター並んで乗ったらええんとちゃう?そしたらちょうど昼やろ」
「確かに、じゃあ並ぶか」
「先に飲みもんとポップコーンでも買ってこか」
「いいな」
朝祇の意図を察したのかは分からないが、廉造はすぐに応じてプラン立てしてくれた。
近くの売店にまずは向かい、列に並ぶ間の飲み物やら食べ物やらを調達することにする。売店のメニューはやはり遊園地価格で、きっとこんな値段ほどの価値はないのであろうことは容易に想像できた。
「ここだけインフレしてんな…」
「朝祇の感想ホンマ謎やわぁ…まぁええわ、何にする?」
変なことを言っている自覚がない朝祇は首を傾げるが、後ろに並ぶ客もいるので、さっさとコーラを頼む。廉造もコーラにしていた。
「ポップコーン何味がええ?バター醤油?」
「分かってんじゃん」
「まぁな」
朝祇の好みを的確に把握する廉造は、言わずとも察していた。どや顔で廉造は注文し、まとめて払った。
先に差し出されたコーラを朝祇と廉造それぞれが持つと、ポップコーンを廉造が受け取る。とりあえず売店から離れ、朝祇は財布を出そうとした。
「廉造、俺の分いくら?」
「ええよそんなん」
「いやでも…」
「俺手ぇ塞がっとるさかい、お金受け取る方が面倒やし」
廉造はコーラとポップコーンを示して笑う。遊園地価格なのだ、2人分はそう安くない。だが、あまりにスマートな手際なのもあって、朝祇は好意に甘えることにした。
男だからこそ払いたい気持ちがあるが、男だからこそ、奢りたい気持ちも分かるのだ。食い下がられる方が困るのである。
「ん、さんきゅ。じゃあ次は俺が払うわ」
「おー、頼むわー」
廉造もそのあたりは分かっているはずだ。きっと次は払わせてくれるだろう。そういう配慮があることも、あまりに小さいことだが、好きだなぁ、と感じる。
そうして2人は長いジェットコースターの列に並んだ。待ち時間は90分となっている。
「ネズミーよかマシやな」
「熊さんの蜂蜜狩りで120分並ぶようなとこだからな…」
「夢の国が人口爆発しとるもんな」
関西人の廉造や現実主義の朝祇がさらりと方々から怒られそうなことを話す。大した意味はない。
付き合い始めて1年半が経過し、この半年以上は寮でともに暮らしている2人は、言葉通り常に一緒にいる。そんな関係だからか、交わされる会話の大部分は中身のない、翌日には忘れていそうのものばかりだ。それが心地好かった。