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●ハロウィンネタ
時間軸は完全に無視しています
世間はハロウィンに浮かれている10月末、早朝の肌寒く感じる東京・正十字学園町。朝祇はジャージ姿でジョギングを終えようと帰り道のコースに入っていた。勝呂とはまだ一緒に走れるほどの速さではないことから別々のコースを走っている。
秋晴れの空は青く澄み渡り、そろそろ都会の喧騒が起き出す頃だ。そんなとき、突然ポン!という音が間近に響き、思わず「うわ、」と声を上げて驚いてしまう。
「やぁ、おはようございます一ノ瀬君!」
現れたのはピンクが相変わらず眩しいメフィスト。だが今日はハロウィン仕様なのか、ジャック・オー・ランタンがところどころに散りばめられている。ピンクと白にオレンジが加わってより目がチカチカする。
「さて一ノ瀬君。trick or treat!」
「え…いや、何も持ってませんけど…」
「ほう、ではいたずらしなくてはいけませんね」
まずい、と朝祇は直感した。録でもないことになるのは火を見るより明らかだ。逃げようと構えた瞬間、ポンっと音が響く。視界の上でピンク色の煙がちらつき、なにやら頭と腰に違和感を感じる。
「よくお似合いですよ。やはりハロウィンは仮装がなければ…それではまた」
メフィストは言うだけ言うと、現れたときと同じようにポンっと音をたてて煙となって消えた。いったいなんだ、と頭に手をやった途端、何やらモフモフとしたものに触れる。
「……いやいや、」
まさかそんな、と腰に手をやると、ゆらりと揺れる黒いもの。
「……バッカじゃねえの!!??」
***
「不動明王よ……」
「なにやっとんねん」
どす、と勝呂に殴られた廉造は、相変わらず天を仰ぎ見ている。
寮にダッシュで戻ってきた朝祇は、まず廉造をたたき起こし、ついでリビングで支度をしていた勝呂と子猫丸にすがった。メフィストにやられたと話せば、2人揃って同情の眼差しを寄越した。
廉造は先程から天地に礼を述べている。
「猫耳に猫の尻尾て、またベタなことしはるな理事長は…」
朝祇の頭に生えたのは黒い猫耳、腰辺りに生えたのは黒い猫の尻尾のようだった。
勝呂は呆れたように言うと、廉造に蹴りを入れる。
「いつまでやっとんねん!はよお前のフードつきのパーカー持ってこいや!貸したれ!」
「蹴らんでもええでしょう!」
今回ばかりは同情に値しない。朝祇はため息をついて部屋にかけ戻る廉造を見送った。
「学校なくて良かった…」
「塾はまぁ…ええやろ」
おざなりな返しだが、事実、塾ならまだ耐えられる。学校は土曜なので休みだ。京都組以外は燐としえみ、出雲くらいしか喋るやつはいないし、宝は論外。シュラに盛大に笑われそうなことだけ耐えれば何とかなるだろう。
そこへ、慌ただしく廉造が戻ってきた。パーカーを受け取りジャージから着替え、下はジーンズに履き替えるために脱いだところではたと止まる。
「ジーンズはこれジャマだよな…」
ゆらりと揺れる尻尾は、尾てい骨付近から出ているためジーンズが履けない。どうしたものか、といったんソファに座ると、「ふぐぉ…」という奇声が聞こえた。
そちらを見ると、廉造が鼻を押さえてスマホを連写し始めたところだった。
「いや何撮ってんだよ!!」
「オカズにしよ思て…」
「直接俺とすればいいだろ!」
「そないな問題やないわアホ!!」
下世話なことを話した途端、勝呂が廉造を殴った。ついで、朝祇の猫耳を引っ張る。殴らずに痛みを与えようとしたようなのだが、耳を掴まれた瞬間、びりびりとした快感が頭から下腹部に向かって駆け抜けた。
「んぁっ…!」
思わず声が漏れ、咄嗟に口元を余った袖で覆う。勝呂はびくりとして手を離したが、急に顔を赤らめてそっぽを向いた。
「いやいや…ぶかぶかな彼パーカーで下履かんとナマ足な上に猫耳尻尾でさらに萌袖で感じとるとか激シコ過ぎん?」
一方の廉造はもはや真顔である。こんな真剣な顔は久しぶりに見た。そして、その言葉で自分がどう見えていたのか察する。 とりあえず、無言で自室に戻った。