不浄王編番外1 実家へ
●不浄王編後
実家に帰ると地雷原だった話
不浄王が倒された後、候補生を含め討伐隊の祓魔師たちは各々虎屋へと戻った。病院に搬送された者もおり、達磨ももちろんその一人だったが、無事に戻ったそうだ。
しかしその人の多さ故に、候補生たちが寝泊まりする部屋がなくなってしまい、自室を持つ勝呂と子猫丸を除いた候補生は番頭部屋に押し込められてしまった。
廉造は志摩家に帰ればベッドはあったが、色々とあるため帰らなかった。そこで、疲れ果てているというのに朝祇と同じ布団で寝ることになった。
出雲が屏風を挟んだところに寝て、残りの広い部分に廉造と朝祇、燐、宝、しえみが並ぶ。燐は朝祇たちの向かいだ。
最初こそ廉造は「一緒やね」とはしゃいでいたが、さすがに京都の市街地全体を覆う五神の守り地を発動させた疲れから、布団に入るなり揃ってすぐに寝てしまった。
そして今、もう昼過ぎの太陽が若干傾いた時間に、朝祇は目を覚ました。目の前には廉造の胸板があり、いつの間にか腕枕で抱き込まれていたらしい。暑さで起きてしまったようだ。浴衣ですら暑苦しい気温である。
「……クロ、」
そして同じタイミングで起きたらしい、燐の掠れた声がした。こっそりそちらを見ると、燐の側で眠る、包帯を巻いたクロの姿があった。無事だったようだ。
燐はそのまま隣で眠るしえみに気付き、ピタリと動きを止める。あ、これ面白いやつだ、と朝祇は声をかけるのをやめてたぬき寝入りをする。
「……あ、燐……目が覚めたんだね」
すると、しえみも目を覚ました。「よかったぁ」と心底ほっとしたようなしえみに、燐は照れ臭そうにする。
「な、なんでこんな寝てんだよ、どっかケガしてんのか?」
「してないよ。ちょっと点滴打ってもらうだけのつもりだったのに、燐の顔見てたらいつの間にか寝ちゃった」
昨晩は全員が徹夜だった。いや、宝は何をしていたのか分からないが。皆疲れてすぐに眠ってしまったのだろう。
「燐、お疲れ様。大活躍だったって、勝呂君たちが……」
「あぁ……いや、実はちょっとやばかったんだけどな。みんなのお陰で何とかなったんだ。…お、お前のことも思い出した」
「えっ?」
絶対に顔を赤くしているのだろう、燐はいつもの男前さはどこへやら、照れたように言った。
「それが、すげー励みになったんだ……あ、ありがとな…!」
「ほんと?」
「はっ?」
掛け布団と浴衣の擦れる音がして、しえみが体を起こしたのだと分かる。燐はさらに慌てたようだ。朝祇はにやけているのがバレないよう廉造の胸もとに顔を寄せた。
「私、燐の役に立ったの…?」
「え?う、うん、たったよ、助かった」
「っ!わ、私…!」
「?どーした??」
「嬉しい…!」
しえみは声を震わせた。涙ぐんでいるようだ。思えば、京都に来てからずっと思い詰めたような顔をしていた。役に立ちたいんだ、と言っていたのを聞いた気もする。
ちらりと見てみると、なんとしえみが燐の手を握り締めたところだった。
「燐!」
「お、おい…」
「あ、あのね、聞いて…!私、これから何があっても…」
お、これはまさか、まさかなのか?と朝祇は内心で胸を高鳴らせた。場合によっては「カップル成立〜!」とやらなければ。
「私は燐の友達だよ!ずっと、ずーっと、友達だからね!!」
ぼん、と音がしそうなほど顔を赤らめたしえみは、顔を覆って燐の反対側を向いて転がった。それに、燐も顔を赤くしながら悔しそうに睨む。
その様子が面白すぎて、ついに朝祇は噴き出した。
「ぶはっ!」
「ブファッ!」
それが、すぐ近くで重なった。どうやらたぬき寝入りは朝祇だけではなかったようだ。
「す、すまん、我慢できへんかった…!」
「ふは、友達、ずっと友達て…!」
「志摩!?一ノ瀬!?なんでお前ら…っ、」
「…ちなみに私もいるわよ」
「出雲!?それに腹話術も!」
どうやら候補生勢揃いだったことに気付いていなかったらしい。顔を赤くしたままの燐に、笑いを止められなかった。
「ま、お気の毒様やで、ホンマ。同情するわー」
「やばい…!くく、今のは…」
「お前らぁ…っ!!」
一頻りからかったところで、廉造が「あっ、」と話を変える。
「つーか、俺ら明後日東京戻るらしーんやけど、明日1日休んでええて霧隠先生が!良かったら、京都皆で観光してかへん?」