不浄王編番外2 柔造と蝮
●不浄王編後
柔造の結婚と弟たち
朝祇の実家を訪れた翌日、朝から廉造と朝祇は、燐やしえみたちと京都市内を回る支度をしていた。時間のかかる女子勢を待つ意味でも、まずは話をしていない勝呂と子猫丸にも伝えなくてはならない。
そこで廉造と2人で、旅館のどこかにいるであろう勝呂たちを探しに行くことにした。すでに朝から蝉がうるさく鳴き、じとりとした熱気が外から伝わってくる。
「あっつー…」
「今日は一段と暑い日やなぁ」
中庭に面する廊下を歩けば、中庭は厳しい日差しが煌々と照らしていた。室内との明るさの差がくっきりとして目眩がしそうだ。
とりあえず当てずっぽうに歩いていると、だんだんと奥の方から怒鳴り合う声が聞こえてくる。柔造と蝮、さらに他の宝生姉妹や金造の声もする。またか、なんて思っていると、やがて現場となっている部屋が見えた。庭に面して開け放たれた障子から、蟒や八百造の喋る声もした。
その喋障子の前には勝呂と達磨和尚、子猫丸もいる。
「あ、いた」
「なんであないな出歯亀みたいなことしとん…」
声をかけようと廉造が息を吸うと、柔造の衝撃的な言葉が凛と響いてくる。
「改めて蟒様、蝮を俺にください」
「くっ…こちらこそよろしく頼む!!」
「ありがとうございます!!!」
「!?げほっげほっ、」
とんでもない会話に、廉造はつい噎せた。その背中を擦ってやると、また部屋はやんややんやと騒がしくなる。
拒否する蝮、認められない宝生姉妹と金造のものだ。
「な、なんつーことに…」
「ホンマかいな…」
確かめるかのように障子まで行くと、中の和室では志摩家と宝生家がカオスに騒いでいた。廉造は引いたようにそれを眺める。
「うーわ、柔兄結局蝮姉さんを…ほとんど身内やんけ、引くわぁ」
「俺らは男どうしだけどな」
「せやった、余計なこと言わんどこ」
罪深さは比べるまでもない。
そんな2人に気付いたのか、子猫丸が達磨と話していたところからやって来る。達磨は何やら言って去っていった。
「志摩さん」
「おっ、子猫さんに坊、探してたんやー。あんな、俺らこれから奥村君たちと市内観光すんねん。坊たちもどー?」
「ええですね、それ」
「…おん、分かった。準備してくるわ」
勝呂も子猫丸も乗り気なようで、二つ返事で頷いてくれた。着替えやら準備をするらしく、2人とも自室へいったん向かった。朝祇たちはすでに準備できているためその必要はない。
すると、突然部屋から柔造と蝮が中庭へと飛び出した。その後ろからドタドタと金造と宝生姉妹も続き、縁側から柔造たちを見守る。
柔造は錫杖を構え、蝮はナーガを召喚していた。
「勝手に決めるな!私は結婚なんて絶対できひん!!」
「チッ、往生際の悪い女やな!昨日はあんなに…」
「あ、あれはどうかしとったんや…!お前は二度と私に近寄るな!」
その応酬に色々と察してしまい、微妙な気持ちになる。戦闘状態となった2人に、金造たちは縁側に座って行く末を見守った。勝呂たちを待つためにも、朝祇と廉造もいったん座った。
「柔兄はこないな小さいところで終わるような男やない…!もっとおっきいことが成し遂げられる男なんや!」
金造は歯軋りをしている。その隣で廉造は苦笑する。
「もー何言うとるのか分からんけど…えーやん?予想通りやん」
「そこが嫌なんや!!柔兄はいっつも予想の斜め上いってて欲しいんや!!」
「へー、まぁ予想通りが嫌いうんは分からんでもないけど」
どうにも兄貴大好きな志摩ブラザーズは、柔造への大きな期待があるようだ。金造は嘆かわしそうに手を組んで戦闘する2人を見つめる。
「分かるやろ!?せやのに…蝮じゃ乳が足りひんのや…せめてC…!!」
乳の話かよ。
朝祇は彼氏の兄に呆れざるを得なかった。隣の廉造は完全に白い目を向けている。
朝祇はその肩をぽん、と叩くことしかできなかった。