生まれてきて
●4年前
柔造(21)、金造(17)、廉造(12)×夢主(15)
今年も、あの日がやって来た。
12月22日、明斗の誕生日であり、大嫌いな日だった。
***
誕生日を祝いたい、と言われたのは志摩家に入ってから半年後のことだった。
まだ明斗は自身の力のコントロールが万全ではなかったし、母屋で暮らしていなかった。そんなときに柔造に提案されたのが最初だった。
保険証を見て誕生日が近いことに気づいてのことだったようだが、明斗は首を横に振った。
ただでさえ養子に迎えてもらってありがたいのに、そのうえ誕生日だなんて心苦しい、と断った気がする。まだ志摩家に来て日が浅かったこともあり、柔造は仕方無いと頷いてくれた。
13歳になるときにも聞かれたが、同じ理由は通用せず、柔造に説得された。
そこで初めて、明斗は本当の理由を言った。
「生まれて来なきゃ良かったって思うことがたくさんあったし、そう思われたことも多かったから、誕生日が嫌いなんです」
生まれたときから、人と違うものが見えて、力が暴れて誰かを傷付けてきた。
家族に疎まれ家族と思われないなかで、なんで生まれてきてしまったんだろうと考えた。
家族に、母になんで生んだんだろうと言われてきた。
そして、ついに捨てられた。それは当然の帰結だったのだろう。
そんな自分が生まれた日なんて、祝うようなものではない。それに、いくら柔造に大事にしてもらっているからといっても所詮は武器。武器の製造日を祝うことなどない。
そう考えていて、それを伝えれば、柔造は少し傷付いたような顔をした。その表情が忘れられなくて、そんな顔をさせてしまったことに自己嫌悪した。
しかしその後、親族会議で金造に怒られ、家族の一員なのだと、兄弟なのだと言われた。
兄弟として、家族として志摩家の中で過ごしていくうちに、柔造たち兄弟を家族と思ってもいいのだと思えるようになった。
廉造たちの運動会でさらにそれを実感し、最近はすっかり慣れたからかぞんざいに扱うことも多くなった兄弟と兄弟らしい距離感になったように感じる。
しかしそんな去年も、同じ会話をした。
やはり10年に渡って嫌いだった誕生日なんて日を、大好きな志摩家の人たちに祝ってもらうのが忍びなかったのだ。
明斗からは全員の誕生日を祝わせてもらえたのだから、それで十分だ。
だから今年も、それで良かったのだ。
しかし、15歳の誕生日まであと1週間となった日の夜、柔造は明斗の部屋に来て、同じことを言ってきた。
「明斗、来週誕生日やろ?そろそろ祝わせてくれへんやろか」
「…柔兄、だから俺は、誕生日嫌いだからさ…俺が生まれた日なんか、」
「明斗!!」
そこで柔造が怒鳴った。
突然のことに肩が揺れる。思わず見上げると、柔造はしゃがんで、明斗を抱き締めた。思いきり抱き寄せられ、胸板に顔を押し付けられる。
「じゅ、柔兄…?」
「明斗、お前は自分のこと、生まれた日を祝う価値なんてないて思うとるかもしれん。せやけどな、俺や金造らにとっては、明斗は大事な家族や。明斗がこの世に生まれてきてくれてホンマ良かったって思ってんねん」
その声は必死で、切実だった。明斗はそれでもまだ首を縦には振りたくないと思ったが、やはり少し大人になったのか、とりあえず受け入れて、それなりに反応すればいいのではないかとも考えた。悪戯に拒否し続けるのも良くない。
そこで明斗は頷くことにした。とりあえず、ものは試しだ、今後も続くのだから、適切な返し方を学んでおこうと思ってのことだ。
だから、「ホンマか!?」と喜びを全面に出して驚いてくれた柔造に、罪悪感を感じてしまったのだった。