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そしていよいよ、12月22日がやってきた。
どうやって切り抜けよう、なんて考えながら起床し、とりあえずいつものように仕事に出る。

出張所に着くと、まずは八百造が出迎えた。


「おはようさん、明斗」

「おはよう、父さん」

「突然やけど明斗、これやる」


八百造はそう言うと、明斗に何かを渡してきた。反射で受けとると、それは腕時計だった。


「誕生日プレゼントや。今年は祝ってええ聞いてな」

「えっ、そんな、プレゼントなんて!」


明斗は慌てて返そうとしたが、八百造は苦笑して明斗の頭を撫でた。それに動きを止めて八百造を見上げると、八百造は目尻を優しげに緩める。


「人にもろたモン返すんは失礼やで」

「…っ、でも、」

「明斗。確かにお前は俺と血ィ繋がっとらんけどな、確かに俺の子や。それに気付くんが遅れて傷付けてもうたこともあった」


いつぞやの父の日のことだろう。当然のことなのだから気にする必要などないのに。
八百造は撫でるのをやめると、肩を軽く掴んだ。


「自分の子供が生まれた日を祝わんで、父親なぞ言えへん。これからもお前の父親でおりたいさかい、受け取ってくれへんか」

「…分かった」


ずるいなぁ、と明斗は思った。こんな言われ方で断れるはずがない。
八百造は「じゃあ、」と仕事に戻っていく。大人ってずるいなぁ、ともう一度思った。




続いて警邏隊の部屋で書類仕事をしていると、同じく仕事中らしい蝮が訪れた。深部担当のはずだが、どうしたのだろうか。


「明斗、仕事中堪忍な」

「蝮姉さん、どうも。どうしたんですか?」

「今日誕生日やって聞いてな。これ、プレゼントや」

「えっ!」


まさか蝮が志摩家の一員である明斗にプレゼントを寄越すとは思わなかった。驚いて差し出されたものを受け取ろうか迷うが、先ほど八百造に言われたことを思い出して受け取る。
小さな円筒の入れ物で、少し重たい。


「ナーガの力使うて作る、宝生家秘伝の軟膏や」

「そんなものもらってしまっていいんですか…?」

「黙ってもらいよし。いつでも作れるさかい、気にすることやない。またお前さんは無理するんやろうし、それやったらこれで治してや」

「…はい、ありがとうございます」


自分なんかにそんなものをやっていいのか、という思いで一杯になるが、言うと非礼になると考えて言わなかった。だが顔には出ていたようで、蝮は苦笑する。


「…気にするな言うても気にしてまうんやろうな、あんたは」

「…そりゃあ、まぁ…」

「…言いたいことはないわけやないけど、それは志摩の申たちの仕事やし、私は何も言わんどくわ」

「はぁ…」

「おめでとう、明斗。今日は楽しんだらええわ」


蝮は何やら意味深なことを言い残して、部屋を出ていった。楽しんで、と言われても恐縮しかできないというのに。
明斗は軟膏の入れ物を、とりあえず大事に仕舞った。




さらに仕事を終えて出張所の渡り廊下を歩いていると、後ろから呼び止められた。その声は、志摩家の者として真っ先に反応しなければならない人の声。


「明斗!」

「っ、竜士様」


呼び止めたのは竜士で、後ろには子猫丸もいた。中学生になって、竜士はめきめきと背が伸びた。
すでに明斗と同じくらいある。


「今日、誕生日なんやろ」

「竜士様まで…」

「僕らお金ないさかいプレゼントとかできひんのですけど…」


竜士と子猫丸は少し申し訳なさそうにするが、明斗はそんなことをしてもらう立場ではない。


「そんな、俺はプレゼントなんてもらう立場じゃ…」

「俺らが渡したかっただけや。まぁ、なんも渡せへんし言葉だけやねんけどな…」

「言葉をもらえるだけで身に余ります」


竜士はそんな明斗にため息をつくと、「まぁ、それは柔造たちの仕事やし」と何やらひとりごちた。


「とりあえず、おめでとぉな。これからも体には気ィつけてくれ」

「あまり無理しはらないでくださいね」

「…、ありがとうございます。子猫丸も、ありがとう」


せめて何かしたい、と意気込んでくれる二人に、大きくなったんだな、と思うと同時に嬉しさも沸き上がる。八百造や蝮には申し訳無さが先行してしまったが。


「八百造から、仕事終わったらすぐ家戻るよう言伝預かったで」

「竜士様に伝言させるなんて、」

「ええから!はよ行ったれ」


竜士はまた呆れたように笑って、明斗の背中を押した。一体何なんだ、と思いながらも、言われるがままに帰路についた。


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