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地下の東京モノレール正十字学園駅を出てエレベーターで上がっていくと、陽光の照らす地上に出た。学園の中腹にある、地上の正十字学園駅である。
洋風の駅舎を出ると、まるでフランスかスペインにでも来たかのような町並みに圧倒された。京都の和風な町並みに慣れた明斗には違和感ばかりだ。


「いやぁ、ホンマ懐かしなぁ」

「そっか、柔兄ここのOBか」


柔造もこの学園に通い、祓魔塾で祓魔師になるための勉強をしていた。5年前のことだ。


「…柔兄も5年前まで東京にいたってことか。俺と一緒だね」

「…あぁ、せやな。卒業した年の5月に、明斗と出会ったんやな」


そう、柔造も明斗も、5年前に東京を離れた。柔造は何度か東京に仕事で来ていたため5年振りというわけではないが、2人して流れた時の速さに感慨深いものを感じる。


「金兄も今年の3月に卒業したしね」

「ホンマやなぁ。せや、こっちおいで」


すると、柔造は明斗を連れて歩き始めた。駅前のロータリーから、可愛らしい路面電車に乗ってどこかへ向かっていく。
促されるまま着いていくと、やがて人気のないところで降りた。辺りには職員用の居住施設があるだけだ。仕事中だからか、まったく人の姿はない。
石畳の道を進んでいくと、目の前に橋が現れた。大きな橋は丘から外側に向かって突きだし、その先には塔がある。
丘の下方へ行くのに、この橋から塔に行けば階段で斜面の下に下りられるのだという。

その橋はかなり高く、塔の向こうには大田区の住宅街が延々と続く。

橋を柔造は進んでいき、真ん中辺りで止まった。


「見てみ」

「…うわぁ、すごい」


橋から北側を見ると、東京都心が一望できた。臨海のビル群から品川のオフィス街、東京タワーや六本木ヒルズなど東京らしい光景だ。昼が近づいてくる都心は、車のクラクションや飛行機の音などさまざまな喧騒に満ちている。


「すごいやろ〜、1人になりたいときに、ようここ来とったんや」

「…ファンクラブみたいなのあったんだっけ?」


茶化して言うと、柔造は苦笑する。風に吹かれて爽やかに笑う様は、まさに男前である。


「まぁ、たまにそういうんが煩い思てここ来てたこともあったなぁ」

「金兄聞いたら怒りそう」


贅沢な悩みだとキレそうなことを言っている。特にモテたいなどと思ったことのない明斗からすれば、単純にやっぱり柔造はすごい、というくらいのことしか思わなかった。


「はは、せやなぁ。…にしても、ここに明斗連れて来れるとは思わんかったで。特別な場所やったさかい、嬉しいわ」


朗らかに笑う柔造に、少しドキリとした。特別な場所だというここに連れて来れて良かったと言って憚らないことに、照れ臭くも嬉しくも感じた。


「…俺も、柔兄の思い出に触れられて嬉しいよ」


そして、出会う前の柔造の過去に近付けたこと、同じ視界を共有できたことが嬉しかった。また一つ、柔造のことを深く知れたからだ。


「ここで柔兄や、金兄が過ごしてたんだなぁって思うと、来れて良かった」

「…そうか」


柔造に軽く頭を撫でられる。日射しは厳しいけれど、風はまだ6月の湿っぽいそれで、暑くは感じない。それも合間って、心地よい時間が過ごせた。
研修は昼からのため、早く出てこうやって学園町を見れて良かった。


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