京都不浄王編/火天と火鳥
●京都不浄王編5
柔造率いる祓魔一番隊とともに、明斗は金剛深山に再び戻って来た。祓魔の仕事に駆り出されるとき、柔造とツーマンセルかこの一番隊とともに仕事をすることが多い。互いの力はよく知っていた。
到着してから、先ほどよりもはるかに巨大化した姿に圧倒される。陣営を整えている一方で、僧正家は大きな篝火を囲んでいた。烏枢沙摩を呼び出すためだ。
シュラも加わり詠唱し、無事に烏枢沙摩を呼び出したようだが、加護が釣り合わず、錫杖の先に炎を灯して炎の技をいくつか使える状態にするにとどまるようだった。
竜騎士は銃火器で、手騎士はサラマンダーなどを召喚して胞子を焼いて行き、少しずつ山の奥へ進んでいく作戦のようだ。
錫杖に炎を灯した柔造たちと合流すると、少し、血縁のないことを目に見える形にされて心がざわついたが、それもほんの僅かだった。理由は簡単だ。そんなことを気にする必要がないのだということを、柔造や家族が何度も明斗に分からせてきてくれたからだ。だから、明斗はそれ以上気に留めない。
それよりも、彼らの炎を明斗の風がサポートすることでさらなる力を得るのだ。明斗にしかできないことであり、最も相性が良い柔造と明斗にこのような加護の力も加わるとあっては、そうそう負ける気もしなかった。
「一番隊俺に続け!明斗、頼むで!」
「任せて」
明斗は剣ではなく、愛用の拳銃を取り出した。火の加護を受けた魔法弾を詰めてある。これで援護しつつ、一番隊の炎を強化していく。
一番隊の面々が炎系の技を錫杖から胞子に向かって浴びせると、それに明斗が風を起こして炎をさらに燃え上がらせるのだ。一番隊に飛沫が飛んでくれば、拳銃で正確に撃って焼き尽くす。
確かに気の力は腐には弱い。だが、そんなことでは上二級は務まらない。どんなときでも倒すべきものは倒せるのが上級だ。
「南さん!2時の方向から飛沫来ます!」
「了解っ、」
「柳葉魚さん、フォロー方向お願いします!」
「12時、上!」
「了解です」
坊主頭で比較的若い南に、援護できない飛沫を気配で知らせ、茶髪で左目を隠した柳葉魚の攻撃を前方の上に向かってフォローする。互いにこの程度の協力は慣れている。返答は最小限だ。
しかし、それでもキリがない。不浄王はどんどん大きくなっており、こちらの損害も目立ってきた。
やはり、倒すには。
あの同じような境遇の、まっすぐな少年の力を借りるしかないのかもしれない。
***
しばらくそうやって戦っていると、明斗は森の奥から音と光を感知した。音は風の力によって届いたもので、光はそれにつられて目線を向けた際に見えたものだ。
よく意識を向けると、銃声だ。それに火の強い気配もする。
「柔兄!」
「なんや!」
「森の奥が怪しい!銃声と火の王の眷族の気配がする!」
「なんやと?…あっちはどの部隊も展開してへんはずやぞ」
「…不浄王はあそこまでまったく到達してない、交戦しているとすれば、人どうしだ」
「っ!」
そこで思い当たる可能性はただ一つ。
藤堂だ。
「一番隊!小目標変更や!森の中の異音を確かめる!行方知れずの藤堂の可能性がある」
「はっ!」
すぐに一番隊がうなずく。この状況だ、八百造の指示を仰ぐ時間はないし、そもそも柔造はその必要がない立場だ。
「柔兄、先行するね」
「おん、頼む。無理はするなよ」
「じゃあなるべく早く来て」
明斗は機動力が高いので、先に向かうことにした。風の力を足に纏うと浮き上がる。
そのまま、一気に森の中を文字通り飛ぶように駆け抜けた。あまり早すぎると木にぶつかりかねないので、それなりの速さだ。
向かい先からは断続的に銃声が聞こえてくる。さらに水の精の気配もした。高度な戦闘が繰り広げられているらしい。
すると次の瞬間、とてつもない強い気が迸った。風すら感じるような強さだ。思わず力を止めて、転びかけるように止まってしまった。本能だ。明斗の悪魔の部分が叫ぶ。それ以上近づくなと。
燐から感じた間接的なものとはまったく違う。まるで、サタンそのもののようだった。
だが本能の警告を無視して、明斗は再び走り出す。サタン本体がいるわけもない、何が起きているのかは分からないが、慎重に、しかし進むべきだ。