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森を進むと、開けたところに明るい色のトレンチコートが見えた。その姿を視認した瞬間、明斗は鎌鼬をヤツに叩きつけた。突然のことにもろに食らい、後ろへ吹き飛ばすことに成功した。
「っ、藤堂…!」
やはり、藤堂だった。
茂みに吹き飛んだ藤堂を睨みつけると、藤堂は笑顔を崩さずに明斗を見やる。
「おや、君は志摩君と一緒にいた…ふむ、君も悪魔の血を引くのか。面白い時代になったものだね」
君も、という言い方に引っかかって、藤堂から意識を逸らさずに近くの木の根元に視線をやる。そこには、メガネの背が高い少年が倒れていた。ほくろは多いし体格も違うが、どうにも燐に似ているし、そもそもあのサタンの気配は間違えようもない。
「…まさか、奥村燐君の近親者?」
「え、はい、双子の弟で東京の中一級、奥村雪男です」
「…京都出張所上二級、志摩明斗。状況は…まぁ、見ての通りか」
なんと双子の弟だという。まるで似てないが、近親だという仮定をしてみれば面影はある。明斗も簡単に名乗ってから、藤堂に視線を戻すと、鎌鼬によって切り刻まれた皮膚は急速に治っていた。立ち上がる藤堂は、面白そうに明斗を見る。
「君、志摩家の子なのか。にしても似ていないし、何より志摩君は悪魔の血は引いていない」
「あいにく養子なんでね。悪魔の血を引くのは俺だけだ」
「驚いた、境遇まで似ているじゃないか。良かったね、奥村雪男君」
藤堂もまた、笑みを絶やさない胡散臭い男だ。なぜか炎を纏っているが、その炎はかなり強力だ。だから水の精を使っても倒せていないのだろう。気配からして、炎のもととなっている悪魔は非常に上級だ。とても明斗の手には負えない。
迂闊に攻撃を仕掛けるわけにはいかない。炎であれば、明斗の風の力があれを消し飛ばせるほどの強さでなければならないが、あくまで血を引くだけの明斗にそこまでの力があるかは微妙なところだ。
考えていると、藤堂が口を開く。
「それにしても雪男君。その目、君のものでないね。もう普通に戻っているが…」
「目…?」
明斗が雪男の目を見ても何の変哲もない。しかし藤堂は楽しそうだ。
このまま喋っていても意味がない、どうする、そう思った瞬間、突然背後から物凄い勢いで錫杖が飛んできた。すんでで避けると、錫杖はまっすぐ藤堂にぶち当たり、再び藤堂は飛ばされる。
「…おや君か。執念深いねぇ」
柔造と一番隊は、素早く空き地に展開すると、明斗と雪男の前に陣取り、柔造が戻って来た錫杖を掴んで、陣の先頭で藤堂を睨みつける。
「この狸爺…!貴様は俺の大事なモンめちゃくちゃにしよったんや!!灰の残さんから覚悟しとけ!!」
その錫杖の先端は炎に覆われている。その炎を見て、藤堂はなおもおかしそうに口元に笑みを湛えて立ち上がった。
「君、烏枢沙摩の加護を受けているのか。へぇ、それは面白い…!」
立ち上がった藤堂は怪我こそ治っているが、明斗によって切り刻まれた服はそのままだし、そのときに散った血液は服にだっぷりと付着してる。見た目だけなら重傷だが、実際には無傷だ。
「火天と火鳥、どちらが強いか力比べといこうじゃないか?志摩君」
「燃やし尽くす…!」
私怨も十分に入っているらしい柔造は、ギリギリで冷静というところだった。明斗はそんな柔造の顔にそっと風を吹かせる。途端に、柔造は眉間の皺を少し減らして力みすぎた力を抜く。