3


明斗は柔造の隣に立つと、少し冷静になった柔造に軽く意識を向ける。それを察した柔造は、小さく「俺は右や」と言った。実は、これだけで2人作戦会議は終了となる。それだけ、2人で戦ってきた経験値があった。


「了解」

「行くで。烏枢沙摩忿怒要訣…」


柔造は錫杖を構えると、低く詠唱を開始した。錫杖に宿す悪魔の力によって発動する技である。合わせて、明斗も風を纏った。


「火車輪斬!!」


そして、一気に燃え上がった柔造の錫杖の先から、回転する炎の斬撃が放たれた。急速な勢いで藤堂に向かっていく炎を、明斗は風でさらに強化する。元の大きさの3倍近くになり、回転する炎はまさに燃え上がる車輪だ。

炎は藤堂に直撃するが、いずれも藤堂の纏っている炎に飲み込まれていく。だが、その炎によって藤堂の視界が遮られているうちに、2人は接近して直接攻撃をかましていた。柔造は藤堂の右側、明斗は左側に回り込む形である。先ほどの意思疎通はこのことだった。

柔造は容赦なく首を、明斗は腰を切りつけた。だが、藤堂は不敵な笑みを崩さない。


「魔元素の形成図では…弱い元素は強い元素に吸収される。さらに迦楼羅の再生能力は優秀だ」


切りつけられた部分がすぐさま回復していき、斬撃もすべて吸収されてしまった。やはり半端な加護では足りなかったようだ。しかも藤堂は、迦楼羅、つまり不死鳥の悪魔堕ちだという。


「風で強化する君たちの協力プレーは面白いが、力比べは私の勝ちかな?」


いったん引いて離れれると、すでに藤堂の傷は回復していた。
烏枢沙摩の加護も、明斗の風も、力押しではかなわないし、直接攻撃すらすぐに回復していく。回復が追い付かないレベルでの集中攻撃も考えられるが、炎による範囲攻撃が可能なため接近ができない。遠距離からの物理攻撃は炎によって防がれる。


「それなら…っ、」


明斗は自身の周りに、鎌鼬を纏った。急速に回転する刃物のような風は、一切の空気の移動も許さない。つまり、炎を近づけないのだ。
その状態で明斗は藤堂に突っ込んだ。

藤堂からは炎の塊がぶつけられるが、それらを弾いて藤堂の至近距離にまで近づく。


「おっと、実体のない炎を上回る物理シールドか」


藤堂が冷静に分析する。その腕や胴体を剣で刻むが、こちらも鎌鼬を纏っているので逆に近づけず、決定打とはならない。あまり近づくと、自身まで鎌鼬によって傷つくからだ。


「その状態で回復速度を上回るつもりかい?」


藤堂は、明斗が回復速度以上の攻撃を食らわせる作戦に出たと考えているらしい。しかし、そんなつもりはない。

明斗は思い切り藤堂の胴体の前側を切りつけると、剣を薙いだのとは別の左手でショットガンを取り出した。それを、剣を振りかぶった瞬間に藤堂の頭目掛けて発砲する。
悪魔堕ちといえど人間の体だ、脳漿を吹き飛ばせば沈黙すると考えたのだ。

明斗の放った銃弾は、正確に藤堂の頭の上部を吹き飛ばした。目から上が消えてなくなり、一瞬藤堂は動きを止めて静かになる。


「やったか!?」


背後から一番隊のそんな声が聞こえてくるが、明斗は瞬時に復元していく脳と頭蓋骨、そして頭部に戦慄した。あまりに速い回復は、まさに人間のそれではない。
明斗は鎌鼬を解くと、その風を足元に集中させすぐにそこを飛びのいた。瞬間、そこに藤堂の炎の攻撃がぶち込まれた。その大きさは、鎌鼬ごと明斗を拭き飛ばしていただろうし、なんならその鎌鼬によって明斗の体にダメージが出ていただろう。

さらに藤堂は相次いで炎の塊を銃弾のように撃ち出してくる。急いで明斗と柔造は一番隊のところまで後退すると、南と同じく坊主の千草が被甲護身の印によって結界を張る。


58/72
prev next
back
表紙に戻る