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「あの場面での銃火器による攻撃は予想していなかったな。さすが、その年で上二級になるだけある。近接戦について学ばせてもらったよ」
藤堂は相変わらずの調子で無造作に炎の攻撃を続けてくる。結界に当たる攻撃は激しい音を立てて霧散していく。
「悪魔の血を引く者として、君はとても興味深いが、奥村君と違って心に隙が無い。そこも、さすが志摩家といったところだね」
もし仮に、藤堂が単独犯ではなくイルミナティに繋がる者だとすれば、廉造のことは恐らく知っているだろう。そこまで前提とすればこれは皮肉だ。だがそれは彼にとってはであって、廉造は二重スパイ、皮肉だとしても正しくない。
しかし今はそんなことはどうでもいい。
「こちら側に来てくれそうもないなら、敵としては邪魔になるし、そもそも志摩君たちはもう興味もない。まとめて消えてもらおうか」
そう言うとさらに攻撃を強め、結界が押されていく。
「柔造様、相手はこちらの炎の吸収しよる上、上級悪魔や、いったん引かはった方がええんとちゃいますか。分ぅが悪いわ」
それなりに老齢の戦士である熊谷が柔造に進言する。一番隊の中でも、その経験値からこうして意見を述べてくれることが多い。
そこへ、雪男が手を上げた。
「すみません、僕の考えを聞いてもらえますか」
「言うてみ!」
柔造が許可すると、端的に雪男は説明を始めた。
いわく、藤堂に憑依する悪魔である迦楼羅は炎の悪魔であるがゆえに、憑依している藤堂の体と釣り合わない。もともと悪魔は同質のものに憑依するからだ。
そうすると、藤堂はこのまま炎を吸収し続ければ体が炎との同質化に耐え切れず崩壊するはず。その際、悪魔が迦楼羅、つまり不死鳥であるため、その体は灰になる。ということは、先ほどから雨が降り出したため、この雨によって灰は水に流されてしまうのだ。そうなれば早々回復はできない。
「その案、我々もただでは済まんぞ!」
雪男の案に、熊谷は難色を示す。容量オーバーとはつまり、それまで吸収した炎が一気に周囲にあふれ出すことである。周りに展開する一番隊も、その爆風に巻き込まれてどうなるか分からない。
「ぐあっ!」
「南!!」
しかし、ついに藤堂の攻撃に耐え切れず、南が結界ごと吹き飛ばされた。地面に倒れ伏す南を見て、柔造は覚悟を決める。
「どっちにしろただでは済まん、その案でいく!」
もうここまでくれば同じことだ。その柔造の言葉に、他のメンバーも頷いた。
「鳴海と柳葉魚は先鋒、明斗は先鋒と撤退や!熊谷と千草は俺の炎の強化に専念しろ!」
そして素早く柔造は指示を出す。すぐに黒髪の鳴海と柳葉魚は錫杖を構えて走り出し、錫杖の先の炎を操る。千草と熊谷は地面に胡坐をかいて手を組んだ。
「烏枢沙摩忿怒要訣 火頭金剛槍!!」
「オン シュリマリママリ マリシュシュリ…」
錫杖の先の炎は槍のように鋭く尖り、それを藤堂に向かって突き立てに行く。その後ろで明斗は剣を構えて、2人の隙間を縫うように藤堂に迫った。
柔造と千草、熊谷は柔造の炎の強化のために、烏枢沙摩の真言を詠唱する。
まず明斗が藤堂に到着し、剣と風によって鋭く藤堂に向けて斬撃を放つ。藤堂は炎によってそれを避けながら、同じく炎によって攻撃もしてくる。それを風で吹きとばしたところで、さっと後ろに飛びのく。
そこへ鳴海と柳葉魚が錫杖を突き刺すが、藤堂はその先端を易々と掴むと、それによって2人を振り回して放り投げた。
「ははは、だから私にとっての炎は、燃料をいただくようなものなんだよ」
「ぐあっ!」
2人が吹き飛ばされるのを横目に、明斗はバレないように上を見る。そこには案の定、高く飛び上がった柔造が、巨大な火球を錫杖から上空に掲げて迫っていた。
「狸ィ!!オン クロダノウ ウンジャク!」
最後の詠唱をすると、柔造はその火球を思い切り地面に向けて叩き落す。その直前に、明斗は風によって鳴海と柳葉魚を浮かしてその場を離れさせ、自らも撤退した。
「火生三昧!!!」