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柔造は蝮の部屋を出たあと、すぐに金造を見つけて、番頭部屋にいや廉造を拉致し、3人で人気のない一室に入った。


「何なん柔兄…」


布団から引きずり出された廉造は不満そうにし、金造はよくわかっていなさけだ。柔造はとりあえず畳に腰を下ろすと、2人もどかりと座った。


「2人に折り入って話がある」

「なんでも聞くで柔兄!」


金造は勢い込んでいってくれたが、廉造はどこか察したような表情だった。柔造はとりあえず、男らしくきっぱりと述べた。


「明斗のことが、恋愛的に好きや」

「…え、それだけなん?」

「別に知っとるけど」


柔造としては結構意を決した告白だったのだが、金造はぽかんとし、廉造はやっぱりか、とでも言いたげな声音だった。
なんと2人して今更何を言っているのかといった感じだったのである。


「…お前ら知っとったんか」

「バレバレやで柔兄」

「さすがに俺でも分かるで」


廉造は呆れているし、金造は自虐のようなものを交えながら頷いた。さすが兄弟というか、柔造としては少し羞恥もある。だがそれなら話は早い。


「ま、まぁそれはええわ。そんで俺は、そろそろ明斗にアタックしよ思ってん」

「あー、不浄王倒したさかい、柔兄も縛られる必要あらへんもんなぁ」


やはり廉造は話が速い。さすが、柔造の立場を正確に理解していた。金造はあまり分かっていなさげだったが、「応援すんで!」と手放しに言ってくれた。


「でも柔兄、大前提としてアキ兄のこと傷つけるようなことできひんのやで」

「当たり前や。そこでお前らに頼みがある」

「なんでも言うてや!!」


金造に救われながら、柔造は2人への頼みを口にした。明斗を傷つけずに、柔造との距離を変える方法だ。


「ええか、まず、恋愛っちゅうもんを明斗に分からせる必要がある。そんでもって、明斗の中の俺への気持ちがどないかはっきり形にさせるんや」

「これでただの兄としてしか見てへんかったらめっちゃおもろ…なんでもないです」


廉造を睨みつけるが、廉造は今回かなりのキーマンになってもらうのだ、一応個人的なことを頼んでいる自覚はあるので、柔造はあまり廉造に強く出ることはしなかった。

そうして具体的な策を2人に話し、それを2人に精査してもらって少し変えてから、いよいよ作戦が始まった。



***



明斗は疲れ果てて一番隊の宿泊している部屋にやって来た。出張所も旅館もカオス状態でどこも人であふれているのだ。負傷して布団に臥せっている柳葉魚の隣に力なく倒れ込むと、珍しく疲れた様子の明斗に他の一番隊のメンバーも心配そうにしてくれた。


「大丈夫か明斗さん」

「大丈夫です…ちょっと疲れただけで…」


南が優しく心配の声をかけてくれたので、明斗は柳葉魚の布団に顔を埋めながら小さく返す。そんな明斗の頭を、柳葉魚がよしよしと撫でてくれた。


「俺らが臥せってるばかりに明斗さんに負担多くなってすんまへん」

「柳葉魚さんたちが謝ることじゃないですよ、やれる人がやればいいんです」

「隊長が猫かわいがりするんも分かるなぁ」

「ほぉ、それは良かったわ」


しみじみと柳葉魚がそう言ったところに、柔造の声が落ちてきた。柳葉魚は「ヒッ」と声を上げると、慌てて手を離す。明斗は顔を上げて柔造を見上げた。


「柔兄お疲れ」

「ん、お疲れやったな明斗。ちょっと話あるさかい来てくれるか?ついでに飯行こう」

「行く」


言われて空腹を感じたので、明斗はすぐさま起き上がる。柔造に連れられて、一番隊の面々に礼をしてから部屋を後にした。
明かりが灯された慌ただしい廊下を歩きながら、明斗は柔造に用件を尋ねる。


「話って?」

「そないに大したことやあらへんよ。あんな、ひょんなことから蝮たちにマンガ借りたんやけど、俺忙しいさかい読めへんねや。代わりに明日、明斗が読んであらすじとか教えてくれるか」

「マンガ…?」


不仲なはずの宝生姉妹からマンガを借りるとは。しかも、それを代わりに明斗に読めという。謎の頼みだが、柔造に頼まれては応じないわけにはいかない。


「別に構わないよ、父さんに明日休めって言われたし」

「ならええんや。君物語いうてな、今めっちゃ人気らしいで。知らんけど」

「ふーん…?」


よく分からないが、明斗はとりあえず頷いて柔造についていった。


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