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2028年1月、パキスタンとアフガニスタンの騒乱は、鎮静化していたものが再び激化しようとしていた。もともとシリアとイラクから駆逐された過激派組織の残党が両国に逃れていたのだが、騒乱で政権を奪取しようとして失敗し、国境の山岳地帯に逃れた。
その後、カフカス紛争でイスラームの国であるアゼルバイジャンと、それを支援するチェチェンを助けるべく、パキスタンとアフガニスタンから多くの義勇兵がカフカスへと向かい、そこで武器や資金を手にして帰国した。
彼らはアフガニスタンとパキスタンにまたがって暮らしていているパシュトゥーン人を味方につけると、再び政権掌握を目指して戦争を開始。騒乱後の人々の支援にあたっていたNGO団体や、国連の停戦監視団、PKO部隊などを一斉に捉えて人質にすると、アフガニスタン政府を崩壊させ政権を奪った。
パキスタンの政府も掌握すべく、過激派組織とアフガニスタン義勇兵はパキスタンの首都イスラマバードへと侵攻し、政府は南部の都市カラチに逃れて遷都した。
過激派側に人質として拘束されている外国人の数は389名、さらに旧アフガニスタン政府の政治家や両国の実業家など23名も捕まっているため、合計412名が敵中にあった。
また、異民族や異教徒への迫害も激しくなっている。
この深刻な問題に関し、騎士團はインド支部から特科大隊のうちマラーター大隊とガンダーラ大隊を派遣、アメリカ支部もアルファ大隊を派遣することになった。一般科の傭兵たち1万人も投じることになっており、騎士團としてはかなりの規模での展開となる。
そして、日本支部はこれに前後して玲弥を准大尉に任命した。事実上の大尉だが、人を率いることができないということでこの称号となっている。それは、単独での任務を許されるということも示唆していた。
そうして日本支部からも玲弥が単独で派遣されることになり、玲弥はアメリカ支部アルファ大隊の指揮下に入ることとなった。
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「いやぁ、君が噂の世界で唯一の転移能力保持者で、准大尉という特別な称号を冠する玲弥君だね?ぼかぁルーイン・ライト、会えて嬉しいよ!」
「……葛城玲弥です。こちらこそお会いできて光栄です、ライトニング」
軍艦が大量に停泊するカラチの港、そこから遠くないホテルの一室にて、玲弥は初めてライトニングと出会った。
ライトニングも玲弥同様、世界で唯一の相反する元素系能力を同時に有する能力者である。火炎、水氷、雷電能力を同時の持つSSランクはこの男だけだ。
さすがの玲弥でも名前を知っている男だったが、まさかこんなにも前髪で目が見えない不気味で不潔な男とは思っていなかった。
「僕のこと知ってくれてるなんてますます嬉しいなぁ」
「はぁ…」
そして、非常に関わりづらい。玲弥には苦手なタイプと言っても良かった。
その後、玲弥はアルファ大隊とともに北上し、一般科に先駆けて旧首都イスラマバードに向かった。敵に街ごと人質に取られているようなものだ。先に特科大隊で敵戦力を削ってから、友軍による入城を待つことになる。
任務そのものは、世界で最も優秀だと称されるアルファ大隊をもってすれば難しくはなかった。特に、玲弥が単独で敵司令部を殲滅し指令系統を破壊したため、なおさら容易だった。
早々に市内の敵戦力を駆逐し、周辺から敵軍を放逐した玲弥たちは、友軍を待つため市内に宿泊することになった。
そしてそこで、やはりというか、玲弥はアルファ大隊や一般科の傭兵たちの一部によって体をいいように使われることになった。およそ13人は相手にしただろうか。そろそろこれも給料をもらってもいいのではないか、なんて思いながら汚れた体を拭いて服を着ていると、背後に気配がした。
まだいたのかと振り返ると、予想に反してそこにはライトニングがいた。
「…人の趣味にあれこれ言うつもりはないけど、ぼかぁこういうの良くないと思うなぁ」
「好きでやってるわけじゃないですけど」
「あれ、そうなの?随分気持ちよさそうだったから」
言葉を選ばないライトニングに不愉快にならないでもなかったが、堪えて服をしっかりと着直す。
「…別に、任務に支障でなきゃ、どうでもいいだけなんで」
「へぇ、それはまた…なんの感情も見せないし、いよいよダッチワイフみたいだねぇ。やっぱ君の趣味?他にも君のこともの欲しそうに見てたやついるから紹介しようか?」
「…あんた、用はそれだけ?」
いい加減にしろ、という意味を籠めて睨みつける。好き好んでやっているという言い方は、さすがに癪に障った。
「…はは、うんうん、そういうのだよ。ぼかぁこんな感じだからさ、君も遠慮なんていらないんだよ、さらけ出しちゃいなよ」
しかしライトニングは快活に笑うと、玲弥に近寄って、汗で張り付いた前髪を撫でた。思わず後ろにのけぞるが、今度は抱き留められ逃げられなくなる。
「いろんな君に興味があるんだ」
「…変態かよ」
「いいねぇ、その調子」
やはりこの手のタイプの人間は苦手だ。
しかし、玲弥の中でどこか枷が外れたような気がしたのも、また確かだった。