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アフガニスタンとパキスタンにおける人質の救出は難航を極め、イスラマバードから敵に反発する市民や異教徒、異民族を救出することはできたものの、肝心の外国人はなかなか助け出せなかった。
玲弥は単独でカンダハールにて囚われていたNGO職員32名を救出させたが、ガズナではインドの特科大隊が作戦に失敗し11名の人質が死亡した。
その後も作戦は長期化し、首都カブールでアフガニスタンの政治家や国連職員を助け出す任務はついに玲弥とライトニングの2人だけで行うよう指令が下った。
無事に成功させて122名を救出したが、ますます気に入られてしまったらしい。その夜、ライトニングに初めて抱かれた。
そうして何度か体を重ねるうち、2028年5月にようやく生存した外国人をすべて救出し終え、騎士團は撤退した。過激派政権は国連の有志連合軍の担当だが、結局連合軍は政権を倒すことはできず、月末には撤退。アフガニスタンとパキスタンは完全に過激派政権の国家となった。カラチ周辺の南パキスタンは事実上分離独立しており、そこには米国とEUの連合軍が常駐している。
玲弥はライトニングに散々アメリカ支部への移籍を求められたがすげなく断り、6月の頭には帰国したのだった。
***
「…玲弥?」
帰国後、基地の廊下を歩いているとばったり柔造と出くわした。避けるように任務を続けていたため、実はエレバンでの任務以来、会うのは初めてだった。半年ぶりくらいになる。
「…柔造さん」
「随分久しぶりやなぁ!准大尉になってんやろ?」
「…まぁ、」
中尉をやるのが面倒だからという理由でしかないため曖昧に頷く。玲弥な上に、矛造の死後初となる会話でもあるため、どうすればいいのか分からなかった。
しかし、柔造もそれくらいは察していたらしい。
「…矛兄んことは、もうみんなそれぞれ整理つけとるさかい、もう気にせんでええ。…お互い、矛兄んこと触れるんは傷つくだけやんか?」
「………、そう、ですね」
なかったことにとまでは言わないが、必要以上に気にして触れようとする必要はないということだ。こうやって、大人は先回りして子供である玲弥を楽にしてくれる。
なんだかよくわからないが、玲弥は、それが堪らなく嫌だった。
「…じゃあ、これで」
准大尉となった今、もう玲弥は小隊には所属していない。柔造とも、同じ任務を付与されることはほとんどないだろう。
「あっ、待て玲弥、」
すると柔造は玲弥の手を掴んだ。引き止められ、振り返る。
「…向こうで、その……体使われとったって話、ホンマか…いや、答えとうなかったらそれでええねんで?」
珍しく言いよどむから何を言うかと思えば、任務先で抱かれていたことについてだった。噂か何か広まっているのだろうか。
「…別に、任務に支障でなきゃどうでもいいかなって思ったんで」
「なっ…!!ええわけないやろ!?それに、支部でもその噂のせいで玲弥に手ぇ出そうとする奴おんねんで!?」
「…じゃあ、柔造さんも俺のこと抱けば?そうすれば他の奴へのけん制にでもなるんじゃないですか」
どうでもいいあまりぞんざいにそう言った。柔造は息をのむが、逡巡したように黙ると、そのまま玲弥の手を引っ張って近くの倉庫に押し込んだ。
「…ホンマに抱くからな、ええんやな」
「好きにしてください」
色気も何もない。ただ機械的に言った玲弥を、柔造はなぜか痛ましそうに見たが、意を決したように玲弥の服に手を掛けた。
それでいい、と玲弥は安心する。いつも玲弥に先回りする大人の柔造の、まともでない一面が見れたことで、物理的な意味だけでない意味でも近くに感じられたのだ。
「玲弥…っ」
柔造は迷いをその眼に浮かべつつも、はっきりと情欲も浮かんでいた。その眼に見つめられて、玲弥は服を脱がされていくのを感じる。
柔造は玲弥では追いつけない大人だ。しかし、こうして玲弥に欲情して求めてくる。その人間味が、玲弥にとっては心の距離を近くにするように感じられた。
そうして、玲弥は柔造にも抱かれた。