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しかし、行為が終わった直後、2人は藤本に呼び出された。さすがの玲弥も、呼び出しを知らせる腕時計端末にびくりと肩を揺らした。
「…なんで今」
「と、とりあえず行くで」
2人がすぐに向かうと、藤本は微妙な顔でデスクに座っていた。どうやら、2人が何をしていたのかはお見通し、というかそのことで呼び出したのだろう。
「…あまりああいうところで盛んなよ」
「…っ!!も、申し訳ありません!!」
柔造は顔を蒼白にして頭を下げるが、玲弥は藤本の言い方にライトニングに近いものを感じて眉を寄せた。
「盛ってねえし」
「…お?玲弥、敬語はどうした敬語は」
「…盛ってねっす」
玲弥の言葉遣いは、さらに悪化したぶっきらぼうなものになった。敬意のかけらもない。それに藤本は片眉を上げてみせ、柔造は驚いて顔を上げた。
「玲弥…?」
「盛ったの柔造さんだけなんで。俺はちげぇっすよ」
「随分また口が悪くなったなぁ」
面白そうに言う藤本は、以前に玲弥の敬語が砕けたときより好意的な反応を示した。確かに、玲弥はライトニングのうっとうしさにだんだんと敬語がなくなり口が悪くなった。
「…向こうでライトニング大尉に絡まれるなかで、敬語とかいらねぇかなって思ったんすよね。そしたらここでも出ちゃいまして」
「まっ、別に誰も気にしねぇけどな?急に変わったら驚くっつーか」
藤本はやはり、それを悪いこととは思っていないようだった。なぜ前回は深刻そうだったのに、今回はいいのか。分からないが、そこまで興味もなく話をつづけた。
「…なんか、俺の周りろくな大人いねぇなって思って」
「心外やねんけど」
「おいおい俺もだぞ、こんないい男いねえぞ?」
藤本もシュラも適当で愉快犯なところがある。柔造や、おそらく金造も猿だろう、主に下半身が。ライトニングはそれらすべての要素を併せ持つ。傭兵なんて、昔からごろつきの集団だったのだ、敬意の対象になるような者はいない。
もともと自分のことがどうでもよくなってしまった玲弥だ、周りのことも気にする必要のない人たちだと分かってしまえば、周りの環境も対人関係もどうでもよくなった。それなら、適当でいいだろう。
「…俺が最初にまともに感じた感情ってやつは、矛造さんや柔造さんたちに感じた、うっとうしいって感情でした。敬う必要なくないすか?」
「…ほー」
藤本は意味深に笑うと、柔造と目を合わせた。柔造もうなずく。
「玲弥、俺、うっとうしいて思われてもめっちゃ絡んだるからな!」
「…は?なんで?」
「玲弥にもっといろいろ感じてもらいたいねん!あとエロい意味でも」
するりと腰を撫でられる。先ほどはわりと殊勝な態度だったのが、突然セクハラ親父のようになって、しかもうっとうしく感じてもらおうとするなどと言ってくるとは、もう何が何だか分からなかった。
「頭おかしいんじゃねっすか…?」
「その代わり俺以外には触らせへんで!俺だけおれば満足できるように!」
「おい、俺も触るからな」
藤本が言うと、柔造は「うっ…」と言葉に詰まる。嫌そうだが、当然逆らえない。
変なの、と思うが、まあいっか、と玲弥は内心でひとりごちる。玲弥の生きる意味たる傭兵の仕事に支障がなければどうでもいい。
これが、彼らなりの優しさなのだということはうっすらと理解はしていたが、それ以上の理解をしようとは思わなかった。
こうして、今に至る無頓着で無気力な玲弥ができあがったのだった。