交際始めました
●2030年5月
長い昔話を終える頃にはすっかり事後の熱は冷めていた。しかし、勝呂に抱き込まれているため特に寒いとは感じない。途中で勝呂がかけ布団をかけてくれたこともあった。
「俺の昔のことはこんくらい。矛造さんが死んだことで、俺は何もかもどうでもよくなって、何かに固執することはやめた。でも、そんな俺を、藤本大尉、シュラさん、柔造さん、ライトニングとかが色々気を回してくれて、今がある。感謝は、一応してんの」
「そう、か…」
勝呂は難しそうな顔をしている。
それはそうだ。なぜなら、勝呂は志摩家とのかかわりが深い。
能力の遺伝はいまだ分からないことが多く確かなことはあまりないのだが、勝呂家と志摩家、宝生家、三輪家など京都の一門は昔からそれが延々と続いていることで有名だった。
さすがに発現する能力そのものは一貫性がないようだが、能力者が一定数必ず生まれてくるというのは世界的にも珍しいとされる。
大多数の能力者は突然変異で遺伝ではないことの方が多いし、子供を成しても遺伝しないことの方が圧倒的だ。
仏教宗派とその血筋を結び付けることで血縁を守って来たらしく、勝呂家がその座主にあたる。そしてそれを守るのが志摩、宝生、三輪だ。
京都組はこれまでは第二中隊にまとめられていて、第二中隊の中隊長は志摩八百造中尉、その中の第一小隊小隊長は志摩柔造少尉、第二小隊は宝生蟒少尉である。
他にも志摩金造や宝生蝮など、血縁者はすべて第二中隊に分散していた。
勝呂竜士、三輪子猫丸、志摩廉造は年齢が若いため、第三中隊第三小隊にいる。
ちなみにこれらはすべて以前藤本から聞いたことで、最近まで知らなかった。
矛造が生きていた頃はまだ勝呂たちは京都の実家にいたはずだから、あまり見たことはないと思われる。だがもちろんよく知ってはいるため、玲弥とそのような関係だったとは知らなかったのだろう。
「…普通に考えて気持ち悪いよな」
「いや、そうは思わへんけど…」
黙ったままの勝呂に少し不安になってしまい、柄にもなくそんな保険のようなことを聞いてしまった。勝呂もそれは玲弥にとって珍しいことだと分かっているようで、頭を優しく撫でられる。
なぜか、柔造などにやられるより心地よく感じられる。理由は分からない。
「…そうか、お前におらへんかったのは…」
「…?」
すると、勝呂は何かに気づいたように呟いた。少し体を離して顔を伺うと、勝呂はやはりこちらをまっすぐに見つめた。
「お前、ずっと対等なやつがおらんかったんやろ。実力とか、経験とかだけやない、年齢や考え方の近いやつ」
「…そりゃ、お前ら第三小隊が来るまで俺が一番若くてひとりだったし。周りは大人しか…」
「それや。なんでお前がここまで追いこまれたんやろって考えとったけど…お前は、支えられたいわけや、なかったんやろ」
支えられたいわけではなかった。
その言葉に、息が詰まった。図星というか、自分でも気づいていなかったのに、しっくりとくるのだ。
「そう、かも…」
「周りの大人が先回りして支えるだけやだめや。きっと、お前には、一緒に支えあって、一緒にいろんなモン共有して、対等に並びたてるヤツが必要やったんやろ。考えてみぃ、自分が周りの大人といて安心するとき」
安心するとき。
藤本やシュラであれば、からかって冗談を吹っ掛けれているときだろう。特に難しいこともややこしいこともなく、ただ言葉遊びを楽しんだ。
柔造や金造は、きっと体を求められたり、たまに見せる子供っぽい口喧嘩を見たりしたときだ。自分に近い人間なのだと感じられる。
ライトニングは、世界で唯一を冠する者として、一緒に戦い夜を過ごすと素直になれる。
どれもこれも勝呂が言う通り、対等であること、自分にとって近いということを感じられたときに覚える感情だった。
それでも不十分なのは、彼らが圧倒的に玲弥より大人だからだ。どうしても、隣には立てない。