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翌日、玲弥は勝呂に呼び出された。
特に仕事も立て込んでおらず、いつも通り、小隊のメンバーは訓練に励むことになっていたはずだ。
人気のない廊下で、2人で落ち合う。
「どうした?」
「いや…付き合うからには報告が必要かと思てな。お前はどうしたいんや?」
真面目な勝呂らしい。どうやら関係各所に伝えるべきか相談したいようだ。
「あー…全員とまではいかなくても、何人かは必要かもな。大尉とか」
「せやな。あとは、柔造やな…」
「金造さんは柔造さんから伝わるとして…小隊のメンバーは?」
「廉造と子猫丸には言うた方がええやろ」
「そうだよな」
何人か伝えるべき人物を絞る。誰かに言いふらすようなことはありえない人たちのため、特に問題はないだろう。一昔前と違って、今は日本も同性婚が可能だ。寛容になった社会で、さほど周囲の反応も気にならなかった。
というか、柔造に至ってはすでに体を重ねている。
「誰から行く?」
「やっぱ、一番上からやろ。大尉はお前の保護者みたいなモンやし」
きっぱりと言う勝呂はまさに男前だ。玲弥は頷いて、2人で大尉室へと向かった。
***
大尉室にやってくると、藤本が意外そうに入ってきた2人を見た。ちょうシュラもおり、世話になっているから道理か、とシュラもいる場で話すことにした。
「大尉とシュラさんに話したいことがあって」
「おう、つか玲弥お前あの媚薬は…」
そういえば、勝呂とこうなる直接のきっかけであった媚薬はまだ報告をしていなかった。それも含めて話さなければならない。
ちなみに、勝呂には媚薬のことは話してある。
「…あの薬を使って、俺らそのまま…」
「……流されたのか」
藤本は呆れたようにため息をついた。なんの話か知っているらしいシュラはぶふっと噴き出す。
「おっ前ちょろいな!」
「やかましいわ…それで、実は…」
玲弥が話を戻すと、隣に立つ勝呂が続ける。
「俺ら、交際することになりました」
「……は?」
勝呂の低く明瞭な声が放った言葉に、藤本とシュラはそれぞれ固まる。しばし沈黙が流れると、藤本が沈黙を破った。
「…どうしてそうなった?」
「……俺は、玲弥がどないしてこうなったのか、きちんと向き合いたいて思うたんです」
「そんで俺は、昔のこと、全部勝呂に話した」
固まっていた2人は、それを聞いて今度は驚きを顔に浮かべた。
「…そう、なのか。お前が、あのことを…」
「そのうえで、勝呂が俺には対等な関係が必要だって。俺もそうだなって思ったんで、ヤっちゃったからには友達じゃなく恋人になろうって」
「な、なんだそれ」
シュラは呆然と言った。それは玲弥も勝呂も、冷静になってから何となく気づいた。しかし、それが間違いだったとは思っていない。
「まぁ、いいんじゃねぇのか。お前らが自分で決めたことなら俺は関与しねぇさ」
藤本も完全に理解したわけではさなそうだったが、それでいいと判断したのだろう、そう言って態度を和らげた。
シュラはそれに少し驚いていたが、やがて頷く。
「…確かに、これは玲弥と勝呂の問題だからな。あたしらはなんも言わないよ」
ひとまずこちらの大人たちは、玲弥たち本人の意見を尊重してくれるらしい。
昨日、勝呂に言われたことが頭をよぎる。本当に、2人は玲弥の意思を尊重してくれているのだな、と感じられた。