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玲弥は、事前に割り振られた部隊を各ラインに次々と転移させた。
今回は小隊ごとに動くようにしており、中尉3人をラインごとに配置している。
京泊・村松ラインは第一中隊の中隊長ネイガウスが担当し、第一中隊の第一小隊と第二小隊が展開する。
喜々津・矢上ラインには第二中隊の中隊長である八百造がつき、柔造が少尉をやっている第二中隊第一小隊と第二小隊が作戦にあたる。
有明川ラインには第三中隊の中隊長シュラがつき、第三中隊第一小隊と第二小隊が展開する。
そして大村・諫早ラインには准大尉である玲弥が担当としてついて、各中隊の第三小隊、計3つが両市の解放に努めることになった。
担当といっても、どちらかといえば藤本からの伝達係や現場での責任の役目を負うだけで、戦力調整の意味合いが強い。
玲弥に至っては、雪男率いる若い第三小隊をフォローすることに徹するよう言われていた。
転移を終えると、最後に玲弥は雪男たち第三小隊に向き直る。
「…準備はいい?」
「はい」
「おう!」
雪男と燐が返事をし、ほかのメンバーもうなずく。しえみや子猫丸は緊張した面持ちだ。
玲弥は頷き返すと、自分を含み全員で諫早市へと転移した。
***
諫早市西部の県営住宅団地では、第二中隊の第三小隊が戦闘を開始しているころだ。蝮や蟒もいる。
大村湾に注ぐ川の河口付近にある団地で、敵の西彼杵半島と大村市への攻勢の拠点となっている。日本人の生体反応はないと蝮が先行して確認していたため、そちらは安心して攻撃できるだろう。
一方、玲弥たち第三中隊第三小隊は、諫早市中心部から東に2キロほどのところにある畑の中にいた。
半造川が合流する地点に位置する浄水場がこの付近での敵の拠点であるためだ。
ここから諫早湾へと川は続き、干拓地を抜けると有明海だ。
あたりは見晴らしがよく、近くに小学校があるため地下シェルターへの配慮は必要になるだろう。
「三輪君、日本人の反応は」
「ありまへん!」
部隊は雪男が仕切る。あくまで玲弥はフォローだ。
感応能力を使って、子猫丸は施設内に日本人の生体反応がないことを確かめる。上陸初期にはこの地域はまだ戦闘地域ではなく、市民はあらかた熊本方面へ脱出するなりシェルターに逃れるなりする余裕があったからだ。おそらく、地上にはほぼ市民はいない。
「では一気に制圧します。葛城准大尉、」
「了解」
雪男の指示で、玲弥は再び小隊を転移させる。今度は完全に浄水場の敷地内だ。
大小10棟ほどの2階建ての建物が点々としており、北側に水槽がある小規模な浄水場である。
「一番人が多いんは…あの建物です」
「よっしゃ!いくぜ!」
「おい待て兄さん!」
子猫丸が本拠地らしき建物を指さすと、燐が駆け出した。あちこちにバンやトラック、ロボット兵が置かれていることからも、ここが拠点の中心であることはわかっているはずなのだが。
「…まぁ、最悪この施設ごと破壊すればいいし」
「なにけったいなこと言うてはるんや」
独り言は近くにいた廉造にばっちり聞かれていたようだ。金沢市役所を吹き飛ばした記憶が蘇ったのだろう、勘弁してくれとばかりに肩をすくめられた。
すると、ドン、とさっそく爆発音が響いた。ビルの2階から炎が噴き出す。燐が剣から炎を放ったのだろう。雪男が頭を抱えている。
さすがに応戦が始まり、ロボット兵が稼働する。直後に機銃掃射が行われ、無骨なコンクリートの地面に穴が開いて破片が飛び散る。
「くそ、勝呂」
「わかっとる!」
玲弥は勝呂の肩を叩いて離れる。銃弾をかろうじて避けた勝呂は、バチ、と音を鳴らすと雷撃をロボット兵たちに放った。
単純に壊すよりも、過電圧のほうが機械には効果的だ。硬い装甲のロボット兵数台は早くも沈黙した。