第三小隊
●2030年5月
新米の教育なんざできるか、なんて思っていた玲弥だったが、この第三小隊に来てみると、2週間で入り浸るようになっていた。
各小隊にはそれぞれの部屋が与えられており、基本的にはその部屋で隊員は小隊ごとに過ごす。空いている時間は訓練場で訓練に励む者もいれば、小隊室で読書や勉強などに勤しむ者もいた。
それとは別に居住区画があり、そこには四人一部屋で寝室がある。それも小隊ごとになっているが、こちらはさすがに男女で分けられていた。
小隊室、訓練場、居住区画、これが特科大隊の隊員たちが日々を過ごすエリアとなっている。
玲弥は准大尉なので、いつもは藤本と大尉室にいるし、居住区画も一人で一部屋を使っていた。小隊時代は2年前のことで、こうして小隊室にいると懐かしい。
「いやなんでおんねや」
小隊室のソファーでごろごろとしていると、勝呂に突っ込まれた。もう2週間だ、そろそろ慣れて欲しい。
小隊室は学校の教室ほどはあり、入口側にはローテーブルと二組のソファーがあり、壁にキッチンとシャワー、トイレの扉がある。奥には普通のテーブルと椅子が10人全員座れるようになっていた。
そんな快適な空間のソファーで横になっているところへ、勝呂たち京都組と燐がやって来た。
「ええやないですか坊、別嬪さんやし」
「志摩さん…」
京都出身だという勝呂、廉造、子猫丸の3人は昔馴染みで仲が良い。そこに、燐がぐいっとこちらに寄ってくる。
「なぁ今日こそタイマンしよーぜ!!」
「そんな前時代的なことしねぇから…」
会うたびに燐は戦おうとせがんでくる。玲弥が強いと聞いて力試しをしたいらしい。勝呂もそれに頷く。
「ええやろ別に、俺かてあんたに教わりたい」
「俺の能力元素系じゃねぇし…」
「銃とかあるやろ!」
「燐がチャーハン作ってくれたら考える〜…」
「いけ奥村!」
えー、と言いながら燐は満更でもなさそうにキッチンに向かった。まずい、もっと渋ると思った。でも燐のチャーハンは食べたい。
仕方なく玲弥が起き上がると、隣に廉造、向かいに勝呂と子猫丸が座った。
勝呂はガタイがよく、筋肉がすごい。黒のタンクトップに迷彩柄のズボンとロングブーツという傭兵らしいラフな格好は、その筋肉を惜しげもなく晒していた。
廉造も体格は良くて、腕を捲った長袖のモスグリーンのTシャツに迷彩柄のズボンとブーツ、そして上着を腰で袖を結ぶ形で巻き付けていた。
子猫丸はきちんと制服を着ており、迷彩柄のズボンとブーツ、同じく迷彩柄の上着である。室内なので迷彩柄のキャップは外していた。
玲弥はいつもの白黒の服で、手持無沙汰に腰から垂れるサスペンダーを弄った。すると、燐がキッチンからお盆片手に出てきた。茶を出してくれるらしい。
燐は白シャツに迷彩のズボン、ブーツと、勝呂に似たラフな格好だ。
「燐お母さんありがと」
「お母さんじゃねーわ!」
玲弥はもともと食にはこだわりはなかった。というか、何もかも無頓着なのでどうでもいい。食べられればなんでも良かったので、栄養食や簡易食で済ませていた。そんな玲弥を見て勝手に危機感を覚えた燐が出してくれた料理があまりにも美味しく、燐の料理目当てにここへ通うようになった。
やがて、口うるさい藤本の部屋や多くの隊員が絡んでくる訓練場よりも、この部屋の居心地が良いことに気づき、今こうして駄弁っている。
「燐のせいでこの部屋にいたくなる体にされた。責任取れ」
「任せろ」
「えーずるい」
どや顔の燐に、隣の廉造が口を膨らませた。まったく可愛くない。