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一時間後、大きな部屋には、小隊のメンバーたちが散り散りになって膝をついていた。勝呂や廉造は大の字に寝転んで、ぜぇぜぇと息を切らしている。全員疲れはてていた。
その真ん中で、玲弥だけが何事もなかったかのように立っていた。息も荒れていない。そして、一度も反撃すらしなかった。システムは、玲弥の被弾をゼロと示している。
「はーい俺の勝ちぃ」
「な、なんやこいつ…!」
「あかんもう動けへん…っ!」
抑揚なく勝利宣言をくれてやれば、勝呂と廉造が悔しげに上体を起こす。子猫丸や女子2人は完全に動けなくなっている。
「マジでつえーなお前…」
しかし燐だけは立ちあがり、息を整えつつあった。さすが、体力宇宙と称されるだけある。
「俺、こー見えて准大尉なんだけど?」
「あんなヤル気ねぇのにな」
「それな」
自分のことだが、本当にそう思う。こんな気の抜けた自分だが、これでも一応、准大尉を張っているのだ。
圧倒的大差で勝った玲弥だが、もちろん勝つために戦ったわけではない。これは訓練だ、いくらやる気のない玲弥とて、高位の人間として第三小隊への指導をするつもりだった。
「あー…まずお前ら、単独プレイしすぎ。なんのために全員でやったと思ってんの」
ギクリとするメンバー。恐らく、雪男やシュラに散々言われているはずだ。
「燐、お前はごり押ししすぎ。その火力で押し込んだら、味方が死ぬ」
「うっ…」
燐の火炎能力はSランク、その強さにものを言わせてゴリ押ししてくる。そのせいで、何度かさりげなく玲弥が巻き込まれそうになった者を助けていた。
「勝呂、お前もそう。せっかく雷は的を絞りながら全方位展開できんだから、その特性を生かせ」
「…、おん、分かった」
勝呂の雷電能力もSランクで、電気や雷を操れる。強さにかまけて雑に使っているが、精密にやれば的を絞れるのだ。
「廉造と子猫丸は、使い方の工夫で色んなことできるんだから、他の元素系能力のやつと合わせ技しろ」
「はーい…」
「合わせ技…」
情けなく返事をした廉造の念動能力はSランク、大半のモノを動かせる。子猫丸の感応能力はAランクだが、それくらいあれば充分応用できる。
「杜山は攻撃もするべきだし、神木は逆にフォローもするべき」
「は、はい!」
「…分かった」
緑化能力Aランクのしえみは、バリケードや拘束などフォローばかりで攻撃をしてこなかった。出雲は逆に、水氷能力Sランクの強さで攻撃しかしてこない。
「チームプレイの研究は皆でやれよ。…じゃ、帰るか」
そう言うと、玲弥は何でもないように燐のところまで歩き、困惑する燐の背中におぶさった。流れるような行動に呆気に取られ、思わずおんぶしてしまった燐は、ようやくハッとした。
「いやなんでだよ!?」
「疲れた。歩けない。俺が勝ったんだから、抵抗せず小隊室まで戻りたまえ奥村三等兵」
「くっそ…勝呂たちは?」
「もう少ししたら行く…」
どうやらまだ動けないらしい。他のメンバーは置いておいて、燐は玲弥を背負って先に小隊室へ戻ることになった。一人抱えて歩く余裕があるなど、燐は改めて体力宇宙だ。
廊下に出て、ゆっくりと小隊室に向かう。火炎能力だからだろうか、燐の高めの体温が心地よく、定期的な歩調に揺られ睡魔がやって来る。力を使うとどうしても眠くなってしまう。特に今日は結構動いたため余計だ。
「おい、眠いのか?」
「んー…」
「ったく、バケモンみてぇに強いくせに超子供っぽいよな」
「…うっせー…」
「…寝てていいから、落ちんなよ」
優しく言ってくれた燐の低い声に、玲弥は急速に意識を遠退かせながらも返事をする。
「……ほんと、おにーちゃんだよなぁ、燐って」
「はいはい、いいから寝とけ」
「ん…ありがと……」
そうして、燐の肩に頭を預けて、眠りに落ちたのだった。