Contemporary I: devil’s warfare
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会議のあと、アルレシアはオランダの家を訪れた。
特に目的はなかった。
だが、大戦のとき中立だった誰かに会いたかった。
チャイムを鳴らすと、少ししてオランダが玄関から顔を出す。
「アルレ?どないした」
驚いたような顔をしたオランダは、すぐにアルレシアの様子に気付いた。
「…なんかあったんか」
心配するようにアルレシアの頬を撫でる。
滲み出る優しさに、アルレシアは耐え切れなくなった。
「っと、」
アルレシアは、いきなりオランダに抱き着いた。
オランダはそれくらいではびくともせず、簡単にアルレシアを抱き止める。
「ほんまにどないした」
いよいよ心配を募らせるオランダの顔を、アルレシアは情けない顔で見上げた。
「…ちょっと、な。動揺した」
「賠償金の話は聞いた」
「そっか……俺、止められなかった」
「…だいたい話は読める。とりあえず上がりねま」
促されるまま、アルレシアは中に入った。
リビングに通され、ソファーに座る。
オランダはワインを持って来て机に置いてから、隣に座った。
「…アルレ。ドイツのことは気に病まんでもええ。負債返せんのはアメリカが困るんやから、ドイツが払えなくなったらアメリカが何とかするやろ」
「…分かっては、いるんだけどな。でも、他の国たちのドイツへの態度が…辛辣過ぎて。反論した俺にまで冷たい目向けて来て」
ぽつぽつと話すアルレシアは微かに震えていた。
冷たくされる、一人にされる、などはアルレシアが最も嫌がる、傷付くことだ。
やってしまった過去があるオランダには、アルレシアがどれだけ傷付いているのか想像に難くない。
「アルレ、無理せんでええ」
「…無理?」
「せや。泣かんようにしとるやろ」
「…それは、」
「アルレ。俺の前で我慢すんなや」
オランダは横を向き、アルレシアを抱きしめた。
アルレシアはその肩口に顔を埋める。
「…俺は、今だにアルレを傷付けたこと、後悔しとる。せやから、俺は何があってもお前を守る」
「…、」
「泣きねま。アルレにつらい思いさせるやつは俺がかやしたる。アルレのつらい思いは俺が慰めたる。全部吐き出しね、俺が受け止めたるから」
玄関で難無くアルレシアを抱き止めたように、そう言うオランダはしっかりとアルレシアを支えてくれた。
優しくて、頼もしい。
込み上げるものを止めることは、もうできなかった。
「うっ…、っく、」
嗚咽を漏らし始めたアルレシアの背中を、オランダは優しく摩る。
「悲しかったな、つらかったな…大丈夫やざ、いつか平和になる」
「おれっ、俺もう、誰かが傷付くとこ、見たくない…!なん、で、なんで、2000年以上、人は、戦う、んだ…!」
それは、オランダも初めて聞くアルレシアの慟哭だった。
ずっとヨーロッパを見てきたアルレシアだからこそ、その思いは大きいだろう。
ぎゅ、と強くオランダに抱き着くアルレシアの髪を、オランダは梳くように撫でた。
オランダ領時代、一緒に寝ていたときによくやっていたものだ。
アルレシアはこれが好きらしく、仕事でストレスが溜まっているときにやってやれば落ち着いた。
今も、だんだん嗚咽が収まり、落ち着いて来た。