Contemporary I: devil’s warfare
−空虚な平和
1920年までに大方の戦後処理は終わり、ヨーロッパではドイツの賠償金について金額を決定することにした。
1921年4月、各国はロンドンに集まる。
「あー、じゃあ始める。賠償金の金額だが、」
イギリスが始めると、フランスがすぐさま立ち上がる。
「全員に全額払うべき!俺なんかすげえ被害受けたんだから!」
「遮んな!」
フランスは一歩も譲る気はないようだった。
アルレシアは「落ち着け」とフランスを座らせる。
「…、」
ドイツは目を閉じて静かにしている。
「ウチも譲る気あらへんで」
ベルギーもそう言ってコップの水をあおった。
「分かったから聞け!…それは俺も同じだ。ドイツにはきっちり落し前つけてもらわねえと」
「ヴェー、イギリスと意見合う日が来るとは思わなかったよー」
「この一回だけだろちくしょー」
イギリスに続きイタリア兄弟も主張する。
寝返りながら賠償金を求めるあたり、イタリアはツワモノだ。
「アルレシアはどうなんだ?」
「…俺は、ドイツのことも考えるべきだと思う」
「えー!?ありえない!」
フランスは机を叩いた。
「なんで加害者のことなんか!」
「払えないような金額求めても意味ねえだろ。それに、お前らは結局アメリカに負債返したいだけなんだろ?」
痛いところを突いてやれば、イギリスとフランスは目を逸らした。
ふとドイツを見ると、驚いたような顔をされた。
「…なんだ?」
「いや…アルレシアにも攻撃したのに、そう言われるとは」
「そ、そうやでアルレ兄ちゃん!けじめはつけんと!でもそんなとこも好きや!」
「ん?ありがとう?まぁそれより、払えないと分かってるもん請求する気もない。虚しいだけだ」
アルレシアはがめついが、感情に突き動かされたりはしない。
意味のないことはしないのだ。
だがフランスは納得しない。
「なんと言われようとお兄さん許さないんだから!」
「…はぁ、分かった。じゃあ、俺はフランスの1%でいい」
「な、何言ってるん!?」
「そうだぞアルレシア!」
「アルレシア兄ちゃんもっと考えていいと思うよー」
各国がざわつくが、アルレシアは意見を変えない。
賠償金の分配は、フランスが52%だ。
さらにその1%などないに等しい。
「俺はアメリカへの負債はもう返したし、経済も順調だからな」
「優秀過ぎだろこのやろー」
ロマーノは思わずため息をつく。
わずか二年で建て直したアルレシアの実力に驚きを隠せない。
「アルレシアがそう言うならいいんじゃない?俺はきっちり返してもらうから」
フランスは譲らない。
大戦でドイツ、ロシアにつぎ三番目に多い138万人もの戦死者を出していることもあるだろう。
「それなら早くまとめるぞ」
イギリスはアルレシア以外の国と金額を調整し、計算する。
しばらくして、総額が算出された。
各国が席に戻り、イギリスはドイツに目を向ける。
「賠償金総額だ。1320億金マルクとする」
「は!?」
声を上げたのはアルレシアだ。
「おい待てよ、そんなんじゃドイツが、」
「ドイツの味方するの?」
アルレシアに、フランスは酷く冷たい目を向けた。
イギリスや、ベルギーですらも。
「ドイツなんてどうなったっていいだろ」
「アルレ兄ちゃんはドイツの側につくん?」
まるで敵を見るような目。
アルレシアは心がえぐられたような気持ちになった。
それでも、アルレシアは続ける。
「…ドイツは、ドイツ人がどうなると思ってるんだ…そんな金額、国民精神が崩壊するぞ」
「ドイツ人なんでどうでもいいだろ」
「ウチ追放してもうたわ」
「っ、そういうことが、また新たな火種を生むんじゃないのか」
「また消してやればいいだけだ」
誰も聞きいれない。
イタリア兄弟だけは無言だった。
「…もういい、アルレシア。仕方ない」
「ドイツ…」
静かにドイツに言われ、渋々アルレシアは引き下がった。
目の前が暗くなるような気分である。
結局賠償金の額を変えることはできず、世界に発表された。
その天文学的な金額は、ドイツ国民の心を打ち砕いた。
敗北し、敵に信じられない額の賠償金を払わなければならない。
それだけで、国家に絶望するのは簡単なことだった。
同年、イタリアでは全国ファシスト党が結成された。