Contemporary II: the sin
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短期間で矢継ぎ早に様々な出来事が起きたが、東アジアやドイツでも激変が起きていた。

世界恐慌が影響するところが大きい。

そんな中で、1932年、ローザンヌ会議が開かれた。

ドイツの賠償金に関する会議だ。

出席した各国は自分のことで手一杯だったからか、すぐに30億金マルクへの減額が決まる。

そしてそれは、アルレシアが出席した、最後の世界会議となったのだった。




そうとは知らないアルレシアはすぐに家に帰り、新しく変わった上司のもとへ向かう。

武装蜂起失敗のあと、右派と左派の穏健派が連合して政権をとり、政局は安定した。

その首相と会談することになっていた。

王宮に入り目的の部屋に入ると、一人多い。

それが現国王だと気付き、慌てて深々と頭を下げた。

「お久しぶりです」

「いやいや、そんな頭を上げてくれ。孫のような君にそうされては落ち着かない」

朗らかに笑う国王は白髪の老人ではあるが、見た目に反してなかなか切れ者だ。

「陛下より彼の方が年上でしょう」

「それもそうだな、はっはっはっ、」

優しく突っ込んだのが首相だ。

英国系の初老の男性で、グリーンフィールドという。

このグリーンフィールド内閣はようやく恐慌を脱しようする経済の立役者だ。

アルレシアは二人の前まで行き首を傾げる。

「どうしてお二人はご一緒に?」

「国の様子を見に来たんだ」

「陛下はそれを建前にアルレシア君に会いに来たんだ」

首相がいたずらっぽく笑うと、国王も苦笑した。

「バレていたか」

「当たり前ですよ」

余裕そうな二人を前に、アルレシアは一人混乱する。

「なぜ俺を…?」

「不景気になると体調が悪くなると聞いてね、心配になったんだ」

「そんな、死ぬわけでもないのに陛下が心配だなんて、」

そう言うアルレシアに国王は指を振る。

「君だって生きているんだ、つらいものはつらいだろう?」

「そう、ですけど…」

「だったら心配だ。私が心配しなくて、誰が心配するというんだ」

アルレシアはその言葉の理解に時間がかかった。

自分も周りも、他の国ですら、死なないために心配は必要ないと考えていた。


それが、アルレシアを心配するという。それが当然だとも。

初めての経験だった。

柄にもなく照れながら、アルレシアは頬を指で掻いた。

「では陛下、そろそろ私達は」

「そうか…アルレシア君、体調には気をつけて」

国王はそう言って微笑む。

アルレシアも表情を知らず緩めて頷いた。

二人は部屋をでて廊下を歩く。


「他の大臣も会談に加えたいから別室に行くよ」

「はい」

「…嬉しそうだね」

「えっ、」

アルレシアは驚いて首相を見上げた。

「表情で分かったよ。君を陛下に会わせることができて良かった」

前の首相は王室に否定的だったため、アルレシアはなかなか国王に会うことができなかった。

「私も君を心配しているよ。それに、君には個人的な幸せも得て欲しい」

「…なぜですか?」

今までの上司では考えられないようや優しさに疑問に思うと、首相は笑った。

「私の家の家訓です。あなたを、助けることは」

似たようなことを前にも聞いた気がする。

そう考えるアルレシアに気付いたのか、首相は口を開いた。

「私の先祖は、ロンドン大火で助けられています」

「っ!!あのグリーンフィールドか…っ、」

なんと、ロンドン大火で助けた少年の末裔らしい。

ナポレオン戦争のとき、フランス海軍の襲撃の際に助けてくれたのもこの一族のはずだ。

「さすがイギリス人…伝統守りすぎだろ」

まさか首相にまでなろうとは。

「末永くよろしくお願いいたします」

「や…こちらこそ?」

首相は満足そうに頷いて、王宮の秘密の地下室の話を始めた。

それを聞き流しながら、アルレシアは胸が温かくなるのを感じた。


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